不戦無敵の影殺師
shiumachi氏が面白いというので1巻を読んでみた。面白かったので2巻も読んだ。
「自分の強さ」を証明したい、でも「強い」だけでは食べていけない。こうした異能力者が抱える悩みに対し、本巻ではまだきれいな解決策を出せていません。
とあるように、需要のない特殊技能を持った主人公が、現実とどう折り合いをつけていくかという話である。
2巻を読んでいて最も印象的だったのはこの何気ない言葉。
「結局、異能力者っていう生き物はですね、みんな、心の片隅では『強くなければいけない』って思ってるんですよ。表でわざわざ言わなかったとしてもね」
分野は違っても、自分のことのように考えずにはいられなかった。外国で特許の仕事をする日本人がこれを読んでどう自分のことのように感じたかというのは解説が必要かもしれない。
特許の仕事というのは大雑把に言うと技術と法律の知識と経験を駆使して、最先端の技術が他の技術と比べてどうすごいのかをクリアにする仕事だと思っている。その技術の勘所をがっちりと掴むスキルが大事。それは国がどこだろうと一緒。
「結局、弁理士や特許技術者っていう生きものはですね、みんな、心の片隅では『先端技術の勘所を掴めてなんぼ』って思ってるんですよ。表でわざわざ言わなかったとしてもね」なんて自然に脳内変換されていた。でもそんな思いとは裏腹に、ここでは日本顧客対応スキルの方が需要があったりする。
新興国で先端技術の勘所をがっちり掴んでいたら未来が見えるような気がしたからここにやってきたわけであり、翻訳をやったり日本顧客対応をやったりするのは正直本意ではない。嫌ではないけれども、本意ではないということ。やればやっただけ何か新しいものが見えてくるんだろうけれども、初心を忘れてはいけないと思うのである。
その辺りの葛藤と、この主人公がどう現実と折り合いをつけていくのかというのが重なって、非常に共感した。あるものはとりあえず使うけど、初心を忘れずにという少し吹っ切れた感じが読んでいて心地良かった。
あと小手毬の方が仕事がたくさんあって朱雀が嫉妬するシーンがあるけど、これが共稼ぎの夫婦に当てはまるかって言うと正直言って疑問だ。自分は配偶者に嫉妬しないなあと感じた。配偶者の方が給料が高かったとしても、家庭内で足を引っ張っている感じがして申し訳なく思うくらいで別に嫉妬する理由にはならない。自分のことを不甲斐ないと思うかも知れないけど、比較してもしょうがないので妬んだり羨んだりという感情はあまり出てこない気がした。
ともかく、なかなかユニークで妙にリアリティのある設定なので非常に楽しめた。3巻を読むのが楽しみである。
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