某所より課題記事が出ていたので読んでみた。
Free exchange: Zombie patents | The Economist
特許により独占的に薬を販売していた製薬会社が、特許期限満了間近に取れる対策は3つあるとこの記事は言う。
- マーケティングを頑張って、売り上げを維持しようとする
- ちょっと違った特許(Follow-on特許)を取ってちょっと違った製品を保護する
- ジェネリック企業にお金を払って、競合しないようにする
少なくとも安く買うオプションがあるのでマーケでがんばるのが比較的マシ。Follow-on特許はグレーゾーンで、ジェネリック企業にお金を払うのは末期症状とのこと。
最後のは末期症状というか独禁法でアウトだろうなと思った。マーケで頑張るのも限度があるだろうから、Follow-on特許をどう取るかが製薬会社の収益に大きく影響を与えるのだろう。
普段特に意識しているわけではないが、製薬会社の案件では、自分の仕事はアジア各地でいかにこのFollow-on特許を取るかということになる。各国で制度が違うので、各国の状況に精通した代理人を選び、各国で認められるFollow-on特許を狙って行くわけである。“product hopping”だろうがなんだろうが、新規性・進歩性・産業上利用可能があれば特許になるので、そこが腕の見せ所となる。
各国で制度が違うのは、その国の政治にも関わってくる。特許を認めればそれだけ薬の値段があがるけれども、貧しい国だとその国の国民の手に届かないくらい高くなってしまうことが少なくない。それは国益にならないと判断して、Follow-on特許に対して厳しいスタンスを取る国もある。
Follow-on特許には大きく2つある
- 既存の特許で保護された化合物に別のものを混ぜた新しい化合物
- 既存の特許で保護された化合物の新しい用途
化学系だと別のものを混ぜれば別物になることが多いので、新物質として認められることが多いように思う。一方、用途発明は各国の代理人にそれは駄目としばしば言われる。
例えばベトナムは用途発明自体特許の対象ではなく、インドも化合物が新しくない限り特許にならないと言っている。この病気を治すのに使えるって言っても、これらの国では相手にされない。
用途発明にはもう一つ問題がある。薬の用途というのは病気の治癒であり、その用途というのは、病気を治療する方法に該当する。ほとんどの国において病気を治療する方法というのは、特許から除外されている。なぜなら医者が患者を治療する行為が、訴訟のリスクを晒されるのはおかしいから。でも製薬会社のロビー活動の成果か知らないが、一つ目の医療用途については特許の保護を与える国が多い。上述のベトナムとインドは駄目だけど。2つ目の医療用途だとしてもスイスタイプクレームという書き方でやれば特許にしてやるとシンガポールではなっている。
そんなわけで、薬の特許を延命させる手段がなくはないけれども、産業界のいいなりという状況でもないので、わりと制限されている印象だ。そんななかどうやってFollow-on特許を取るかについて、経験に基づいてアドバイスできるようになれば、価値を提供できるのだろう。