現在インドでは新型コロナウイルスのアクティブな感染者数(発症から2週間以内の人)が17万人を下回り、ありがたいことに世界で16位まで後退している。昨年9月には100万人を超えていたのでインドの検査能力は少なくともこのくらいはあり、検査が足りていないとも思えず、ある程度実際に収束しつつあると考えられる。その理由としては、単純に9月頃に感染した人々の免疫が持続しているためだろう。
現在のアクティブな感染者数のうちケララ州とマハラシュトラ州が全体の7割を占め、他の地域では非常に落ち着いた状況となっている。ちなみに私の住むグルガオンは人口約100万人に対してアクティブな感染者数が400人程度となり、一時期と比べてもはや無視できる程度の数値となっている。感染による免疫が半年程度と考えると3月くらいまではこの状態を期待できるが、6月頃にまた波がやってくるのかなと思ったりしている。
そんなインドで最近話題となっているのはワクチンである。Ministry of Health and Family Welfareのサイトに詳細な情報が公開されている。
https://www.mohfw.gov.in/covid_vaccination/vaccination/index.html
特に2020年12月28日更新のGUIDELINESという148ページあるPDFファイルが詳しい。Virus Vaccine, Viral vector vaccine, Nucleic acid vaccines, Protein based vaccineに分けてそれぞれ進捗状況を説明し、インドで候補となる9つワクチンの臨床試験の進捗状況をまとめている。
現在認可が下りているのは以下の2つである。
- Covishield (Astra Zenecaが開発、Serum Institute of Indiaが製造)
- Covaxin (Indian Council of Medical Researchが開発協力、Bharat Biotech Internationalが製造)
どちらも2℃〜8℃で保存可能であるため、-70℃での保存が求められるファイザーのRNAワクチンと比べて効果はやや落ちるがインドで現実的に扱えるワクチンとなっている。
上記のガイドラインにあるワクチン接種証明書のサンプルによると2021年4月、7月、10月のように3ヶ月ごとに計3回接種することを想定しているようである。日本の厚生労働省の資料では28日間隔で2回接種とあるので2回で十分かもしれない。またいつどこでどのワクチンを接種したかという情報管理のため、Co-WINというアプリが使用されるとのこと。
ワクチン接種の対象者についてはフェーズ1として以下の3億人を想定している。
- 医療従事者(1000万人)
- 国境警備隊や警察などのフロントラインの労働者(2000万人)
- 50歳以上の高齢者(2億6000万人)
- 合併症を持つ者(1000万人)
高齢者や合併症を持つ者への接種を3月末までに開始し、このフェーズ1の3億人に対して2021年夏までにワクチン接種を完了させるとのことである。どう考えても2回接種を行う余裕はなさそうなので、少なくとも1回という意味だろう。
フェーズ2以降のことは何も言及していないが、2022年末までには13億人カバーできるようにするという報道も見られる。ちなみにワクチン接種は義務ではなく、自分が該当者となったタイミングで自ら登録しないと接種できないため、実際にワクチン接種される人の数は大幅に減ることも考えられる。
2021年1月16日にインドでのワクチン接種が開始されて約半月が経過し、現在約370万人のワクチン接種が完了したとのことである。このペースは他国と比較して早いが、単純計算で年間9000万回に過ぎず、インドの人口を考えるとまだまだ加速していく必要があるだろう。
ちなみにこれらのワクチンはインド国外へも提供されている。バングラデシュ、ブータン、モルディブ、モンゴル、ミャンマー、ネパール、バーレーン、ブラジル、モーリシャス、モロッコ、オマーン、セーシェル、スリランカの13カ国に出荷されたそうだ。インドは中国を凌ぐ世界最大のワクチン製造国であり、Covishildは月間5000万回分製造され、その製造能力は3月までに30%増強されるとのことである。そう考えると、インドのワクチン接種プロセスで今後想定されるボトルネックは、製造というよりは現場オペレーションも含めたロジスティクス側なんだろうかと想像している。
最後に自分がいつワクチン接種を受けられるかと考えたとき、フェーズ2の内容次第であるが、フェーズ1が予定通り2021年夏で完了したならば、2021年末~2022年初め頃が現実的なところだろうか。ワクチン接種証明書がないと入国できないとか飛行機に乗れないとか、そういう具体的な不便に直面する前にワクチンを接種しておきたいものである。