iPS細胞研究の展望と課題(4)

最後に、パネルディスカッション。

卵子を使う研究の今後

iPS細胞のおかげで、人の卵子を使わなくても良くなった。
でも、リプログラミング100%である卵子は、まだ未解明のことが多い。
まだ完全に同じとわかったわけではないので、他の動物の卵子を使う研究は続く。
やがてiPSが胚由来のものと同じとわかる日が来るだろう。

一般の人へのメッセージ

今だけ切り出してもわからないことが多い
クローンのアイデアだけなら1800年くらいからある
研究を支えるのは大変。異なる文化からのexcitementが重要。

倫理的な側面について(ガードン教授)

この分野の進展がなぜ必要か、聖職者にレクチャーしてる。
最初は敵意むき出しだったが、2時間説明したら、
より多くの人(85%)が支持してくれる。
着床前のものを使用するわけで、失われても問題ない。
普通はなくなってしまうものだから。

社会にも問題がある(ウィルムット教授)

すぐ当たり前と思ってしまう。すぐ忘れてしまう。
社会には大きな問題がある。科学が発展してなければ、今いないのに。
抗生物質とかペニシリンとか、ほんの一部に過ぎない。
なぜもっと早くできないのか。世界中の人々にとって使えるものなのに。
(感想:要は、「邪魔するな」って言ってるように聞こえた。)

ES細胞の問題点(山中教授)

医療なら受精卵を使って良いのかという問題がある。
受精卵は特別な細胞だと思う。
でも基本的に患者の方が大事。
受精卵をゴミ箱に捨てるわけじゃなくて、
患者を助けるために役立てるということ。
iPS細胞から精子、卵子ができてしまうかもしれないし、
そうするとまた別の倫理的な問題が生じる。

国民の期待 in UK

期待を高めて裏切られているので、
英国では、国民は新聞を鵜呑みにしない。
過剰期待は良くない。

国際的な取り組み

枠組みが確立していなくても、世界中がついていってる。
ゲノムのように1国ではできないものと違って小さな研究室でもできる。
バンクを作る協力、アカデミックな協力は重要。
みんなが知財を主張してクランチに陥ってはいけない。
幹細胞の人がやるのは普通だけど、
関係ない人がiPSを使って違う側面を見るのが重要。
ゲノム関係の人、製薬関係の人がiPSを使うと面白い。

ALSなどの病気の解明について

今は何もできない。多くの人が研究すると、将来役に立つ。
長い期間かかるもので、予想することは難しい。
自分の病気を治すために研究を始める人もいる。
その人は研究途中で亡くなった。ちなみにその人が選んだテーマは
短期的に成果がでるものではなく、基礎研究に近いものだった。
いつ治りますかといってばかりではしょうがない。
患者で団体を作って、研究者を雇うことだってできる。

  • 誰か任せにしない
  • 仕組みを作る

これが大事。

寿命について

ドリーはウイルスで肺ガンになった。
クローンだから死んだわけではない。
他の異常はわからないが、テロミアではない。
新たな生命ではないので、問題ではない。

個人的な感想

研究者がそこまでいうと説得力がある。
聞いていて非常に気持ちよかった。
個人的にいわゆる一般の人とか国民とかが嫌いで
お金も出さず、手伝いもせず、当事者意識がなくて
期待ばかり文句ばかり言う人が嫌いなので、
ここまでズバズバ言ってくれてうれしかった。
「あんたがやれよ」って言いたくなるんだろうな。
誰にだって門は開かれているんだし、やる気の問題。
自分でやらないなら、せめて邪魔はしないくらいの
配慮というか、尊敬する気持ちが大事だと思う。


どっかの賢い人、どっかの偉い人がなんとかしてくれるとか
そういう無責任な考え方が好きじゃない。
受け身で無能な一般の人的な表現が嫌いで、その代表者っぽく
振る舞う新聞記者の態度がすごく不愉快だったので、
「団体作って研究者雇えよ」という言葉が非常にいいと思った。
期待するなら、自分自身それ相応の努力を期待されてしかるべき。
勝手に何もできないなんて思いこまないで、各自が
自分のできることをして、自分の影響力を行使するといいんじゃないかな。
将来というのは、一人一人が作っていくものだから。観客なんていない。


UK-JAPAN2008の方々、英国大使館の方々、
非常に興味深いイベントに招待してくださり、ありがとうございました。
iPS細胞研究の展望と課題(1) - technophobia
http://www.ukjapan2008.jp/XP/fd6136.html
iPS細胞研究の展望と課題(2) - technophobia
http://d.hatena.ne.jp/pho/20080426/1209200614
iPS細胞研究の展望と課題(3) - technophobia
http://www.ukjapan2008.jp/XP/fd6440.html