明治・父・アメリカ

先日世田谷文学館星新一展に行ったときに、星新一の父である星一に興味を持ったので買った本。読まずにおいていたら、先日一時帰国してた妻が先に全部読んでしまった。
福島の田舎から東京に出てきて、サンフランシスコで働きながら勉強して、それからニューヨークに行って、働きながらコロンビア大学を卒業して、現地で新聞を発行し、その後帰国して星製薬を立ち上げた人。8月から留学し、今これからニューヨークに行く自分にはぴったりの本だなと軽く考えていたら、近年稀に見る衝撃を受けている。星新一の淡々とした語り口で星一の凄さがさらに際立っている。

明治・父・アメリカ (新潮文庫)

明治・父・アメリカ (新潮文庫)

「うむ。若者らしい大きな望みだな。しかし、容易でないぞ。ここにいれば、ぶじに人生をすごすことができる」
「その、ぶじな人生が面白くないのです」

これは、会社を辞めるときに思った。贅沢かもしれないけど、ぶじでは面白くない。

西国立志編
「天は自ら助くるものを助く」という格言のなかには、限りない人間の体験の結果がおさまっている。自助の精神こそ、個人の発達の根本であり、その結果が国家の活力の源泉となるのである。外部からの助けは、人を弱くさせる。
政治は国民の個性の反映である。人びとの水準が高まらない限り、国はよくならない。政府や指導者にたよってはならない。自立する精神が最も大切である。
原題Self-Help by サミュエル・スマイルズ

この本読みたいな。kindle版を探してみることにする。星一の生き方に共感したのは、自分の根底にこのSelf-Helpを好ましく思う気持ちがあるからだろう。

「自分を助けるものは自分であると思う時に、人は強くなる。信仰とは自分の内部にあるものを信ずることで、それが成功をもたらすのである」

最初から誰かを頼りにするんじゃなくて、とりあえず自分で頑張ってみて、どうしても困ったときだけ助けを求めるということだろう。

粗食でもいいから十分に食え、十二分に食うな。栄養をとったら、くたびれるまで十分に働け、十二分に働くな。くたびれたら十分に眠れ、十二分に眠るな。それで肉体の調和がたもてる。脳の調和は、むだな空想にひたらないことでたもて。

このアドバイスはシンプルだけど大切な気がした。

いつまでもここにいると、心のなかの希望の光が、なまぬるいものになってしまう。なんとかして早いところ、東部のニューヨークかボストンへ行き、より高度なものを学びたい。そうしなければ、渡米した意味がない。

コンフォートゾーンから抜けだそう。やっぱり今この本を読んでよかった。

ここの家でも、これまでに何人かの日本人を使ってみました。しかし、どの人も同僚の悪口を言ったり、不平不満を口にしたりする。それなのに、星は一度もそんなことをいわず、よく働いてくれている。おまえのお母さんは、おまえのような純真な子を生み、忍耐づよい、健康な青年に育てた。これは容易なことではありません。だから、会わなくてもそれがわかるのです。

悪口を言わず、不平不満も口にせず、一生懸命働く。かくありたいものである。

星は前日と同じく、手際よく仕事をすませた。主人は満足げに微笑して出かけてゆく。経営者というものは、いちいち注意することなくものごとを進行するのが好きなのだ。

こうやって経営者の家に住み込んで観察してきたことが、のちの経営者としての仕事に役立っているんだろうな。片目を失明していてもここまでできるのだから、特に健康上の問題を抱えていない自分は当然もっとやってしかるべき。

日本をいつまでも東洋の神秘の国にしておいてはいけない。日本文化については、新渡戸稲造が「武士道」を出し、多くの人に読まれ、日本への理解に役立っている。それをさらに進めたい。日本の産業の発展、貿易の拡大、そういう具体的なことの役に立つ仕事をしたいのだった。それにはまず、アメリカ人に正確な情報を提供しなければならない。

取材のために、首都のワシントンに出かけることも多かった。日本の公使館へ行き、経済統計の資料を入手するのである。

この人が学んだ統計学はこういうところで役立っているのか。connecting the dotsはジョブズだけではなく、誰しも経験しているんだろうな。

青年のおちいりがちな欠点がなく、みどころがある。従順でありながら、意志が強く、熱意があって危険性がなく、怠惰なところがなく努力家だ。

青年はメトロポリス・シック、つまり首都病というものにかかりやすい。にぎやかなところにいたがり、故郷の父母のことを忘れてしまうのである。君は毎月のように父母に手紙を出しており、その患者ではないようだ。雑誌の発行も大切な事だが、たまには帰国して、父母を安心させたほうがいい。

おまえはいつから追憶にひたるようになった。追憶は青春の終りを意味する。すべてはこれからではないか。計画もなく、資金もない。なにをはじめるにしても、容易でないぞ。それができるのか。
できる、と自分に答える。なぜだ、なぜでも。その自信があった。それはたしかだ。なぜ、そう断言できる。いままでの体験によってだ。こう考えてきて、それを与えてくれたものへの挨拶を忘れていることに気がついた。

商才みたいなものがあるんだろうけど、それ以上に何事も何度も何度もチャレンジしている。決して諦めないし、手を抜かない。自分もこれから2年間をどう過ごすか考えないといけない気がした。漫然と過ごしたらそのまま終わってしまう。

男子こころざしを立てて郷関を出る、学もし成らずんば、死すとも帰らず。

とりあえず、星一が目指した街ニューヨークを見るのが楽しみである。