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GFIP2013 2日目(裁判官、大いに語る)

イベント

全体セッション3

シンガポール、中国、オーストラリア、アメリカの裁判官がいろいろ話すセッション。これが思いの外、面白くて驚いた。
まずはシンガポール最高裁の裁判長。IP hub master planを進めていく上で、裁判所として何ができるのかに絞り込んで真剣に取り組んでいて、心意気が感ぜられた。IP hubとしてIPのtransactionを円滑に行い、IP出願では品質の維持を心掛け、そしてIPの紛争解決に積極的に取り組む。法律の中心地であり、金融の中心地として、High value jobを創出していくような場にしていくとのこと。シンガポールの政府系の人は政治家もそうだけど、こういう話が非常にうまいと思った。
書類を一元管理するとか、裁判にかかる時間を短縮化するとか、シンガポールの裁判所はここまでやっているぞと他の国の裁判官にアピールしているのが非常に興味深かった。こういう健全な競争というのはいいと思う。
次に話したのはオーストラリア連邦裁判所の裁判官。オーストラリアも負けてないぞとばかりにいろいろと例を挙げていたが、最も興味深かったのはhot tubbingというアプローチ。非常に画期的だと思う。語源はよくわからないけど、みんなで熱い浴槽に入るというイメージなんだろう。裁判において原告と被告が最初から対立して言い合うのではなく、どこまでがお互いに合意できて、どこから意見の相違があるのかを明確にし、合意している部分についての議論はスキップして、相違があるところに集中するというアプローチ。そうすることで裁判官が読むべき資料は激減し、裁判にかかる時間も激減していい事尽くめらしい。裁判というのは、勝ち負けを決めるところではなく、意見の相違に対して仲裁するところなんだなあと思った。イシューが何なのかを明確にし、みんなでそこに取り組んでいこうというのは、非常に合理的で素晴らしい。
三番目は中国の知財裁判所の裁判官。著作権や商標の裁判が多いんだとか。著作権者、プロバイダ、公共の利益のバランスをとりながら判決を下すとのこと。それから法律の立案にもコメントを述べたりして参加するそうだ。中国も知的財産の保護に力を入れているよとアピールしていたのが印象的。
最後はアメリカの連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)のRandall Rader裁判長。2年前もこのイベントに参加して、途中で歌を歌ってたような気がする。今年は、始まる直前にマーシャル・フェルプスにアメリカに恥をかかせるなよと言われたらしい。でも、アメリカは恥をかかされるべきだ、といいながらプレゼンが始まった。ディスカバリーシステムとかいって、裁判が始まるまでにいくらかかれば気が済むんだ、システム全体を見直すべきだなどなどアグレッシブにいろいろと話していて非常に面白かった。世界の司法制度についても、少なくとも知的財産に関しては違いを最小限にすべきだと主張する。シンガポールがIPのハブになりたかったら、イギリスの超有名裁判官を引き抜いて来ればいいんじゃねとか言ってて面白い。アメリカでHot tubbingの話をすると、オーストラリアのまねじゃないかと言われるが、あれはそもそも私がオーストラリアに提案したものだから、まねとか言われると心外だとか、アメリカの判決を英国とドイツが採用したと誇らしげだったり。
パネルディスカッションで、特許のセントラルアタックみたいな質問(各国が足並みを揃えたら、一ヶ国で無効にされた特許が世界中で一気に無効になるんじゃないかという質問)に対しては、特に否定をしなかったのが興味深い。同じ証拠があって、同じ論理展開をしたら、同じ結果になるのは当たり前じゃないのかと。明快で予想可能なルール作りをすることにより、より安定してビジネスをすることができるという視点はなかった。最後にパテントトロールが裁判に出てきたらどうするのかという質問に対して、裁判ってのは公平であるべきだから、パテントトロールだとかなんだとかで差別するべきではない。だからどうもしない。と言い切っていて格好良かった。
このセッションは別にそんなに期待していなかったが、非常に面白かった。これだけ賢い人々が、一生懸命社会のことを考えて、公平でバランスの取れた社会の実現に向けて尽力しているということを知ることができて良かった。非常にありがたいことだと思うし、自分にとっても非常によい刺激となった。