新聞がなくなる日 前編

11月6日に読み終えたので一ヶ月以上経ってしまった。
新聞がなくなる日
元毎日新聞の記者、編集局長だった人が書いた本。新聞の歴史や特徴
新聞販売店という形態や売り上げに占める広告費の割合などデータを用いて
いろいろと書いてある。韓国やアメリカと比較して日本の新聞はどのように
なっていくのかということをけっこうがんばって書いている印象を受けた。
まあおじいさんが書いているので、カニバリズムという言葉を知って喜んで
使っていたり、インターネットを良く知らなかったりするのは大目に見てあげよう。
全体的にデータが多く参考になった。ではいくつかピックアップして感想を書こう。

1870年「横浜毎日新聞」グーテンベルク活版印刷術を用いた最古の日刊紙
新聞発行を始めるものは政府にあらかじめ保証金を積み反政府論調を展開すると
罰則として保証金が没収された。

中東ではいまだに保証金制度があるらしい。歴史を感じる。

日清戦争で大衆化が進む。10年で部数は5倍 163万部
個別配送網が確立。 販売合戦が激化
時事新報は創刊25周年記念号で200ページを越える新聞を発行
ラジオもなかった頃すでに世界一の戸別配達網ができていた
りんご農園が畑のりんごの虫除け袋の材料に新聞をまとめ買いする

200ページってすでに新聞と呼べるかどうか怪しい。
このあたりが新聞の黄金時代だったのかもしれない。

戸別配達精度が危うくなるのはテレビのデジタル化が完了する2010年
デジタルテレビは新聞のテレビ番組欄を不要にする

これは必ずしもそうとはいえない気がする。新聞を読まず、テレビも一切見ない
自分が言ってもあまり説得力がないかもしれないけど、今新聞のテレビ欄って
読まれているんだろうか。DVDレコーダーで録画したやつだけを見るスタイルが
かなり定着してきているだろうし、新聞にしても一週間分まとめたやつで
番組の時間を確認しているのならば、新聞のテレビ欄はすでにメインじゃないのかも。
個人的にテレビ自体が不要ということをいい始めるときりがないのでやめておく。

グーテンベルク活版印刷

  • 鉛を黄銅の母型に流し込み規格が一定の活字を鋳造する
  • 印刷専用の油性インクを作る
  • たくさんの活字を並べた板状の巨大なはんこを押し付けて紙の表面に文字を打ち出す

報道関係者をプレスと呼ぶのはこの「押し付ける」ことからきているらしい。
なかなか歴史があるものだ。気の遠くなるような作業だな。

3・8・6世代
60年代生まれ80年代に学生生活、30代後半から40代前半

韓国ではこの世代ががんばっているらしい。ネーミングはどうかと思うけど。

  • 一覧性

一目でその日の情報の全体像がわかるように一枚の大きな紙に大小のニュースを
取り混ぜてうまく配列している

  • 言論性

じっくり考えながら読める深い洞察力と分析力を発揮している記事もある
新聞製作者が独自の内容を持った人かどうかにかかっている

新聞の特徴がわりとよくまとまっている。一覧性についてはネットのニュースには
ない強みだろう。言論性については新聞だけの強みではないと思う。
以前ならこのあたりを独占していたのかもしれないけど、ネットの膨大な
情報の中から良い記事を見つける方法を知った現在の自分にとっては
新聞の言論性はone of themに過ぎないといえる。

大衆紙は駄目だがクオリティペーパーの存在意義はある
スポーツ新聞や芸能新聞はいずれ電子新聞に席を譲るか広告掲載専門の
無料紙になってしまうだろう

これはそうだろうな。スポーツ紙や芸能新聞を好むのはいわゆる下流の
人たちだから安ければ安いほどよく、フリーペーパーに勝てないはず。
*1
実際に韓国では大量にフリーペーパーが出ているようだ。

新聞社の最大の知的財産は強力な情報の収集力と分析力、そして編集力と論説力

情報収集力は一般の人に勝ち目はなさそう。口コミとかならいいけど。
編集力も出版関連の人はプロとしてやっているので普通は勝てないだろうな。
でも分析力と論説力はそのニュースに関連する仕事をしている人とか、
物事を論理的に考えられる人ならたいした差はないと思う。
それにたくさんの切り口があった方が物事を見るうえでいいんじゃないだろうか。
ブログジャーナリズムと言ったって情報収集という点から見れば
日本では特に新聞社のおこぼれに預かっているだけという印象を受ける。
国境なき記者団ががんばれば少しは変わるのかもしれないけど。


ネットの新聞は大半が無料だが、アメリカでは16社が有料で提供している。
最大がウォールストリートジャーナルで59万人が会員に登録しているようだ。
紙の購読者はその三分の一で、ネットのを無料で読める。
売り上げの40%販売、60%広告らしい。ある程度クオリティを保てば
有料でもちゃんと読者はつくようだ。


続きはまた後日。ちなみにこの本は父親とかぶった。実家に帰れば読めたのに
買っちゃった。けっこうかぶらないように警戒して本を買っているんだけど、
興味関心がオーバーラップするあたりは特に気をつけたほうが良さそうだな。

*1:ちょっと差別発言かな。下流社会という本も出ているわけだしまあいいか