ウェブ進化論

4480062858ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる
梅田 望夫
筑摩書房 2006-02-07

by G-Tools

かなり乗り遅れたけど、読み終わったので感想を書いておこう。
梅田さんの二冊目?*1の本。前回はマイクロソフトに対するリナックスとか
シリコンバレーで独立してどう変わったかとか、ベンチャーキャピタル
立ち上げるとかまあそういう関連の本だったけど今回はgoogle中心。
ウェブがいまどうなっているのか、今後どうなりそうなのかということが
書かれている。ダイアリーを読んでいるのでなんとなくみたことがあるような
印象を受けたけど、こうしてまとめて読んでみるとインパクトが違った。
特に根拠はないけど、この本に書いてあることを感覚的にわかっていないと
世の中がどういうふうに変化しているかわからなくて、不利益をこうむる
ケースが今後増えていくんじゃないかと感じた。
共通の基盤というかベースとなる考え方というかまあそういうものとして
この本は教科書の一つになりうるものなんじゃないかと思う。


次の十年の三大潮流としてインターネット、チープ革命オープンソース
挙げられている。ハードウェアがどんどん高性能で安くなるということが
重要だが、それだけじゃなくて個人がいろいろと表現をするコストが劇的に
下がったり、ソフトウェアのソースコードが無償で公開されて世界中の
不特定多数の開発者が自由にソフトウェア開発に携われるようになったり、と
世の中が大きく変化しているということを指摘している。
また地球上の膨大な情報を整理しつくすという理念を打ちたてたgoogle
って書いていて正直かったるい。自分の中で自明のことを改めて他人に
説明するがつらい。説明をしないとわかってもらえないから、そういう手間を
省いてはいけないんだけど、とりあえずこの本を読んでもらいたい。


ロングテールと高速道路論はなんとなくそんなものかなーって思ってたけど
あらためてまとまった文章を読んでみると、いかに画期的なことかわかった気がする。
ロングテールの売り上げが三分の一も占めるのであれば、従来の売り方と真っ向から
対立するということも十分ありえる。もう十分対立しているか。
あらゆる分野に高速道路が整備されて、高速道路を行った先に渋滞が待っている
とすると戦略を立て直す必要があるんじゃないかと思った。高速道路的なものと
親和性がある分野なのに現在のプレーヤーが単にウェブに疎いという理由で
あまり高速道路が利用されてないところがあれば、一気に走り抜けられそう。
そう考えるとこれから社会人になるという言わば追い上げる側としては
非常にありがたい世の中なのかもしれない。なんか楽しそうだ。


クライアント側(こちら側)でインストールしたり処理をしたりするのではなく
サーバ側(あちら側)でいろいろ処理をしたり管理したりするのはすでに
自分の中で当たり前になっている。ハッカーと画家でも指摘されていたが
プロフェッショナルがサーバで一元管理する方が楽でいい。でも
インターネットってそもそもリスクを分散するためのものだったわけで
ちょっと逆行している気がしないでもない。進化の過程が行ったり来たり
するものであればまたクライアント側の時代が来るのだろうか。
P2Pには非常に可能性を感じるけど、やっぱりよくわからない。
どうなっても柔軟に対応できるように常に動向を追った方が良さそうだ。


この本は出版を記念してイベントを行っている
http://diary.yuco.net/20060208.html
ログもpodcastも公開されていて、参加している気分をちょっと味わうことができる。
はてな近辺で盛り上がっているだけかと思ったが、必ずしもそういうわけじゃない
ようだ。かなりたくさんのblogで取り上げられているし、本はもうほとんどなくなって
緊急増刷だとか。三年前に知ったときはいろいろなCEOになかなか面白い質問を
投げかけてインタビューしている人というイメージだったけど、アルファブロガー
ウェブ関連の大御所なんだな。シリコンバレーツアーが楽しみだ。

*1:共著で何か他にも出していたような気がする