世界でもっとも美しい10の科学実験

これは確か橋本さんの書評で気になって、本屋でチェックして買った。
Passion For The Future: 世界でもっとも美しい10の科学実験
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004732.html
期待通りかなり面白かった。実験系の研究室に属してたからなおさら。

世界でもっとも美しい10の科学実験
世界でもっとも美しい10の科学実験ロバート・P・クリース 青木 薫

おすすめ平均
stars科学の実験は、芸術であり、職人芸である
stars美しい科学実験とは?
stars科学好きにはたまらない
stars実験からはじまる、、、
stars「科学はおもしろい!」と思わせてくれる本

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ポイントは、タイトルの「美しい」。重要とかエレガントではなく、「美しい」というもの。
実験の美しさとは何かということを、最初に詳しく書いている。途中でも書いてる。
数式のシンプルな美しさなのかと思ったけど、それとも違うらしい。

しかしときたま、新しい洞察にはっきりと形を与え、ものの見方を一変させるような出来事が起こる。それは、予測こそできなかったものの、起こるべくして起こった出来事だ。そんな出来事がわれわれを混乱の中から救い出し、重要なことがらをずばりと―直接的に、何の疑問も残さないほどはっきりと―指し示し、われわれの自然観を塗り替える。科学者はそんな瞬間のことを「美しい」と言うようである。

つまり美しい実験とは、そのうえ一般化や推論をしなくとも、結果がはっきりと示されるようなものなのだ。もしも美しい実験をめぐって疑問が生じるようなら、それはその実験に関する疑問ではなく、この世界に関する疑問なのである。

小さな単純な仕組みで、地球の大きさを測ったり、地球の自転を見たりしていて、どれもかなり興味深い。
全部を紹介するわけにはいかないので、個人的に最もインパクトが大きかったものをピックアップしよう。
ヘンリー・キャベンディッシュの実験。地球の重さを量るというもの。
ヘンリー・キャヴェンディッシュ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5
水素を発見したということで有名なこの人物だが、非常に興味深い。

彼の宇宙論は、宇宙とは、重さを量ったり、数を数えたり、大きさを測ったりすることのできる多数の物体だけから構成されている、というものであったように見える。そして、彼にとって自分の天職は、与えられた七十年の人生の中で、できるだけ多くの物体について、重さを量り、数を数え、大きさを測ることだった。

変人であり天才である人は、こうでなくちゃいけないな。
2つの金属球の間に働く引力の大きさを測定し、球と地球の間に働く引力の大きさを
測定することにより、地球の平均密度を求めることができるということである。
金属球間の引力は球の重さの五千万分の一に満たないので、精度を徹底的に上げないといけない。

キャベンディッシュの天才性は、球を大きくした結果と、全体として実験の精度をともに最大にするためには、各部分についてどこで手を打てばいいかを的確に判断できたことである。

これはすごい。一つ一つしらみつぶしに、誤差の原因になりそうなものを取り除いている。

単なる潔癖性だけでここまでやれるものではない。それぞれのステップで何が起こっているかを判断し、影響を及ぼす可能性がある力は全て洗い出し、その大きさを測定し、補正できるようにするためには、電気、磁気、熱伝導、数学から重力まで、当時の科学に関するキャベンディッシュの膨大な知識を総動員しなければならなかったのだ。

ちょっと笑えた。この本の中でもかなり異色の実験である。
他9つの実験も非常に興味深いので、お勧めの一冊。