山中俊治ディレクション「骨」展に行ってきた

京都に住んでいた頃、東京ってイベントがたくさんあって羨ましいと思っていた。実際に東京に住んでみると、確かにかなりの頻度で気になる展示会がある。あんまり頻繁に見に行ってもそれはそれでどうかと思うので、そんなにたくさん行っているわけではないが、今回のように興味深い展示があると、なかなか恵まれた環境だと感じる。
数ヶ月前にディレクターの山中氏のブログを見つけて、是非行きたいと思っていたので、先日六本木ミッドタウンに行ってきた。

本展では、デザイナーとエンジニアの視点を持って活躍する山中俊治を展覧会ディレクターに迎え、洗練された構造を持つ生物の骨をふまえながら、工業製品の機能とかたちとの関係に改めて目を向けます。
キーワードは「骨」と「骨格」。12組の作家による作品に触発されながら、「未来の骨格」を探っていきます。

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数年前に雑誌の連載で山中氏のエッセイを読んでいて、この人のデザイン、考え方などに非常に興味を持っていたので、どんな展示か非常に楽しみだった。期待以上に楽しませてもらうことができた。展示の具体的な内容は、Robotニュースで詳しく紹介されている。
Robot-ニュース--山中俊治ディレクション「骨」展
http://robot.watch.impress.co.jp/docs/news/20090528_170308.html
骨というテーマで、前半は動物の骨から工業製品のレントゲン写真、家具や精密機械のパーツなどが並ぶ。ドライヤーのこんなところにバネがあるのかとか、ソニーのrollyを分解するとこうなるのかとか、G-shockのパーツが細かすぎとか、シマノのデュラエースはきれいだなとか、この人たちアーロンチェアもバラバラにしてるよとか、いろいろと楽しめた。
後半は、実験室ということでわりと体験型のものが並ぶ。「Flagella(フラゲラ)」の生々しい動きにぞくっとした。「another shadow」という影が動く展示も、微妙な時間差があって非常に楽しめた。下の7分半の動画をみれば、この辺りの雰囲気がわかると思う。

個人的にかなり衝撃的だったのは、「骨からくり『弓曳き小早舟』」。ここまで精巧に作れるものなのかと思った。良くできているとかいうレベルではなかったので。
あと、明和電機の作品紹介が面白かった。さすがとしか言いようがない。

今振り返ってみると、全体としてこの言葉を実践している展示なのかもしれない。

形を描こうとしてはいけない。構造を描くことによって自然に形が生まれる。
Do not attempt to draw figures. Figures naturally appear when we create a sketch of the structure.

山中俊治の「デザインの骨格」 » 形を描こうとしてはいけない

表層的なものではなく、骨格をしっかりさせる。あとは自然とついてくる。何事もそうなんだろうな。なかなか深い言葉である。

すでに現場の人々は疲れ切っています。時間もコストも限られている中で、その修正箇所を指摘すれば、また彼らに大きな負担を強いることになるでしょう。展示空間全体から見れば、わずかなひずみであり、直したところでどれだけの効果もないかもしれない…。そんなときに私が、胸の中で呪文のように繰り返す言葉があります。
「気がついちゃったものは仕方がない」

山中俊治の「デザインの骨格」 » 気がついちゃったものは仕方がない

妥協をせず、最高のものを見せようとする姿勢が素晴らしい。完成度の高いものというのは、きっとこういうところから生まれるんだろう。そういうわけで、気になった人は行ってみればいいと思う。8月30日まで。