バカヤロー経済学

読書感想文8つ目。非常に取っつきやすく、わかりやすく、意外と中身が濃い。
バカヤロー経済学 (晋遊舎新書 5) (新書)
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まともに経済学の本を読んだことがない初心者である自分にはちょうど良い本だった。

「初心者はいつまでも初心者ではなく、いつまでもその立場に甘んじているべきでもない」

まつもとゆきひろ 答える | スラッシュドット・ジャパン

という思想に共感するので、初心者という言い訳はこの辺でやめておこう。比較優位の原則、マネーサプライ、信用創造などは、わかっているようでわかってなかったので面白かった。

経済政策には、財務省が担当する財政政策と、日銀が担当する金融政策の二つがある・・・・・・財政政策は、事業を増やして経済活動を活発にする。金融政策は、お金の量を増やして、経済活動を活発にする・・・・・・財政政策は、公共投資と減税。・・・・・・金融政策なんだけど、これは従来型の金利操作と量的緩和政策っていうのがある・・・・・・公定歩合は、もうないんですよ。・・・・・・1994年に金利が自由化されて、民間の銀行同士でお金を借りられるようになったの。そうすると、公定歩合そのものに意味がなくなるよね。・・・・・・

端的に説明されていて、非常にわかりやすかった。

固定相場制の下では財政政策は有効ですが、金融政策は無効になる。逆に変動相場制の下では財政政策は無効だけど、金融政策は有効になる・・・・・・財政政策は固定相場制の下では内需を拡大させるけれど、変動相場制の下では、拡大した内需が海外に流れるから効果がなくなる

何より説明が短いのがいい。冗長な文章が好きな人もいると思うけど、自分の場合はこのくらいすっきりとしてくれた方がありがたい。

「誰が」なんてどうでもよくてさ、問題は「何を」きちんとやるかなんですよ。「誰が」に依存すると、その人が変わっちゃうとダメになる。だから「何を」しなさい、のほうがいいんです。極端な話、キチンと仕事してくれる人なら誰でもいいです、

日銀の総裁の話だけど、何事もそうだな。政治もビジネスも。こういう合理的な考え方で物事を進めていけるといいな。

ガソリンが上がると、たしかに大変です。大変なんだけど、チャンスも転がっている。つまり、みんながヤバいと思っているときに、実は構造も変わるから、チャンスも山ほど生まれるんですよ。

これはありきたりだけど忘れがちな気がする。

年金制度を維持させるんだったら、保険料を上げるか、貰うのを少なくするかしかないんだよ。・・・・・・元本保証とか自分の蓄えだなんて思っているのは大間違いでね。親への仕送りみたいなもんなんですよ、はっきり言えば。それしか言い換えできないもん。

この年金の説明は、これまで聞いた中で一番しっくりきた。

社会保険料も英語でいうと、ソーシャルセキュリティータックスっていって、税金とあんまり変わらないの。だから、本当は税務署が取ればいいんだよね。アメリカじゃ、社会保険料を払わないと税務署に財産没収されるんですよ。・・・・・・IRS(米国国税庁)っていうのがあって、そこが全部やってくれる。同じ役所がやったら、簡単でしょ。これだけだ。でも日本ではできないの。社会保険庁の職員だけじゃなくて、厚生労働省も反対するの。

こういう現状というのは、見ていて悲しくなる。もっとシンプルにするには、どうしたらいいんだろうか。

何でも国が吸い上げて、国のほうから配分するのが公正なんだって。私は反対なんですけどね。でも実は一つ例外があって、ふるさと納税というものがあるんです。・・・・・・自分で税金をどこにあげるか選べるのが画期的なんです。・・・・・・どこかの県に寄付をしたら、住民税と所得税が一定額控除されるという仕組み。

これは知らなかったので、非常に興味深いと思った。この部分を読んでふるさと納税に興味を抱いてちょっと調べたのだが、それはまたの機会に書くことにする。
読んでいて自分がいかに物事を表層的にとらえていたかを思い知らされた。書いてあること全部が全部正しいかどうかはわからないけど、経済の基本的な部分、ちょっと想像力を働かせればわかるであろうこと、その辺りをもっと日頃から意識しないと進歩がなさそうだ。短い言葉で非常にわかりやすく説明してくれるこの本は、非常に素晴らしい。著者の一人である竹内氏が物理学のバックグラウンドをもつからかもしれないけど、自分にとって非常にしっくりときた本だった。