クリエイティブコモンズについては、4年も前から記事に書いてたし、レッシグの講演を聴きに行ったりしていたし、3年前に
従来の著作権法では、「使っていい」「使っちゃダメ」の二種類しかなかったんだけど、その間を設けるのがクリエイティブコモンズだと思う。「作品と一緒に名前を載せてくれるならOK」「非商用ならOK」「改変しなかったら良い」「同じ条件で再配布するならいいよ」みたいなのを組み合わせて表示することにより自由度を高めるというもの。
第10回 写真共有とクリエイティブコモンズ - technophobia
なんてことを書いてわかったつもりになっていたけど、ここ1,2ヶ月の間、クリエイティブコモンズの人と話をして自分が全然わかってなかったことに気づかされた。
クリエイティブコモンズって、一言で言えば、著作権関連の標準化プロジェクトなんだな。標準化という視点が自分の中ですっぽり抜け落ちていた。それでは意味がない。
そもそも著作権関連の全ての権利を保有するか、全てを放棄するか、その2択だったわけではない。著作権を持っている人が好きなように契約を結べばよいだけなので、その2つの間はそもそも無数にあったし、契約条項を自由に決めればいいのである。でも著作物一つ一つにそれぞれ別の契約条件がついていたりすると、煩雑すぎるし、契約を管理するコストも無視できなくなってくる。そんなわけで、代表的と思われるいくつかのライセンスを用意して、そのどれかを選びましょうというのがクリエイティブコモンズなんだと思う。
いくつかのライセンスに絞り込むことのメリットとしては、その後の利用の促進も挙げられる。オリジナルがごちゃごちゃしたライセンスで、その二次創作物がまた別のごちゃごちゃしたライセンスだったりすると、その後に使おうという人は、まあ減るだろうから、シンプルにいくつかの代表的なライセンスだけにした方が良いという話。で、具体的には、Wikipedia, Flickr, MITオープンコースウェア、アルジャジーラ、ホワイトハウスなどいろいろなところで活用されている。
プロジェクト
このライセンスをいろいろな分野に適用しようということで、クリエイティブコモンズ内でいくつかのプロジェクトが立ち上がっている。
- CC Mixter http://ccmixter.org/ 音楽分野
- ccLearn http://learn.creativecommons.org/ 教育分野
- Science Commons http://sciencecommons.org/ 学術分野
前置きが長くなったが、今日の本題はこのScience Commonsである。
サイエンス・コモンズ
最初サイエンスコモンズライセンスというのがあるかと思ったが、そんなものはなかった。翻訳しながらわかったこととしては、
サイエンス・コモンズは、研究に対する法的、技術的障壁を排除するため、3つの幅広い領域に取り組んでいます
プロジェクト « Science Commons – サイエンス・コモンズ翻訳プロジェクト
ということで、研究を加速させるためのいくつかのプロジェクトの総称としてサイエンス・コモンズという言葉が使われているのだろう。その3つというのは、
- 研究者著作権プロジェクト http://sciencecommons.jp/projects/publishing
- 生物材料移転プロジェクト http://sciencecommons.jp/projects/licensing
- Neurocommons、Health Commons http://sciencecommons.jp/projects/data
最近もう一つPatent Licensesなんてのが加わったみたいだけど、そこまでは追い切れてない。Health Commonsの翻訳はまだできてない。
研究者著作権プロジェクトは、狭義と広義のオープンアクセスがメインみたいな感じ。論文や実験データを共有する上での障害を取り除いている。
一方、生物材料移転プロジェクトは、データではなく実験用マウスなどの物理的なものをやり取りする上で、煩雑な契約プロセスを簡略化して、移転を促進するプロジェクトである。
ニューロコモンズは、神経科学の分野で論文のテキストマイニングをしたり、データ解析ソフトウェアを開発したり、RDFフォーマットに統一したりして、知識の統合を目指したプロジェクトである。詳細はまだ理解できてない。
上に書いた例からもわかるとおり、狭義のオープンアクセスではCC-BYを使うけど、それ以外だとデータではCC0がメインだし、MTA用のライセンスもあるので、サイエンスコモンズ特有のものが多い印象を受ける。いずれにしても、標準化することにより、煩雑な手続きが避けられるのであれば、素晴らしいことだと思う。