達人出版会の本。電子書籍でさくっと買えてしまう。はじめの方は非常に基本的なことが書いてあると思ったのだが、読み進めるうちに詳しく突っ込んだ内容が説明されていることに気づいた。レッシグの言葉を引用して、大きな枠組みの中での位置づけを述べているのがいい。
社会において何かを制御する方法には、「法律」「市場」「アーキテクチャ」「社会規範」の4つの手段があると述べています。これをソフトウェアの流通と照らし合わせてみましょう。
この中でも法律(ライセンス)と社会規範(コミュニティ)がオープンソースにとって重要であって、ここではその法律であるライセンスの話をするというのが明確でわかりやすかった。
著作権の考え方では、このように著作物を複製したり配布することを「利用」と呼びます。これに対して、マンガを読む、映画を観る、音楽を聴くといった作品を鑑賞する行為は、著作権では「使用」として区別します。
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ソフトウェアライセンスは、「特定のソフトウェアを利用する上で必要な許可」ということになります。
細かいことでも一つ一つ丁寧に説明しているという印象を受けた。利用と使用の違いと関連して、リバースエンジニアリングを禁止する条項やオープンソースライセンスだとどの部分の権利が広がるのか、契約と約款の違いは何かなど図解されていて非常にわかりやすかった。
個人的に一番参考になったのは、第6章の「オープンソースライセンスを読む」のところ。各ライセンスの概要がわかりやすく説明されている。例えば修正BSDライセンスは、何がどう修正なのか知らなかったが、広告条項の有無なのかとわかったし、特許条項やデュアルライセンスについても説明されている。
コピーレフトについても、何を派生ソフトウェアと見なすかに関する説明が詳しい。GNU Emacsで編集して、GCCでコンパイルしたとしてもそれらはOSSを道具として使った作業に過ぎないからコピーレフトの対象ではない、というのもわかりやすかった。
そしてAGPL(Affero General Public License)だとWebサービスのユーザにコピーレフト条項を適用するというのはなかなか興味深い。7章のオープンソースライセンスカタログと合わせて非常に充実した内容だった。GPL3ではMicrosoftとNovellとの間で 2006年11月に締結されたクロスライセンス契約の対抗処置やDRMへの対抗策が盛り込まれているなど、概要をつかむには非常に良いテキストになっている。そして最後に、実際にオープンソースライセンスを使うにはどうしたらいいかという実践的なことも書かれている。
何となく聞いたことがある程度の言葉が、ある程度腑に落ちるところまで書いてあるので、自分のような初心者のための入門書として非常に良くできている。今4割引とのことなので、興味がある人は買ってみたらいいと思う。