海外で働くということ

地方都市の公立の学校でごく普通の教育を受け、国立の学部、修士に淡々と進んで、東京で4年働いて、辞めて、シンガポールで1年勉強して、1年半働いて今に至る。
前に書いた通り日本が嫌いだとか、英語を使った仕事がしたいとかそんなことは全然ないし、アジア飯が好きかというと別にそうでもない。単に自分がどこまで通用するのか知りたかっただけなんだろう。海外で働きたいというよりも、日本人であることを削ぎ落とした場所で自分の価値をどれだけ出せるのか試してみたかったんだろう。
専門知識、実務経験、学歴、貯金など使えるものを総動員して、今かろうじて生き延びている。エンジニアやアスリートやアーティストじゃなくても、どっぷり日本の教育に浸かった自分が日本に頼らず働けるんだということがわかってよかった。勇午のような超人的な回復力やキートンのようなサバイバルスキルがなくても、大丈夫なんだということがわかってよかった。31歳にして、ようやくスタートラインに立てた気がする。この面白そうな世界にようやく参加できるのかと思うと非常にうれしい。
エコノミストのオフショア特集やリバース・イノベーションという本を読んで、その変化が自分とどう関わってくるのか考えられるようになっただけでも、3年前に動いた価値があると思っている。少しずつ肩の力を抜いて、自然に物事を見られるようになってきたのも大きい。おぼろげながら自分に必要なこともわかってきたし、これまで自分は何も見えてなかったんだなということにようやく気づくことができて良かった。不安定な状況ながら、そんなふうに前向きで居られることが最大の収穫かもしれない。そんなふうに今思う。