兵庫・三重旅行 三日目

今回の目的は明石のプラネタリウムと灘の酒蔵である。灘は大阪と神戸の間というとてもざっくりした印象しかなかったが、今回実際に行って歩いてみて多少自分の中の解像度が上がった。とりあえず阪神電鉄魚崎駅まで行った。

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最初に行ったのは菊正宗。

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大手酒造メーカーの展示は、以前京都の伏見・中書島エリアの月桂冠などに通じるものがある。

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一つ一つ丁寧に説明していてとてもありがたい。

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こういう知識は自分でどぶろくを作るときにもとても役に立つ。

次に向かったのは白鶴。古い建物と新しい建物が組み合わさっていた。

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菊正宗同様、とても丁寧な工程の説明があった。

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当然のことながら試飲コーナーもある。

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菊正宗にしても白鶴にしても、安くてまずい酒を作る会社というイメージしかなかったのだが、ここで飲んだ蔵元限定酒などとても美味しいお酒もまともに作っていて、やればできるんじゃないかと偉そうなことを感じた。大人の事情で安くてまずい酒も作らないといけないんだろう。

続いて、特に予定なかったが、たまたま近くを通りがかったので泉酒造に行ってみた。

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前の2つと比べるとこじんまりとしていたけれども、とても丁寧におすすめのお酒を教えてくれて、非常に感じが良かった。もちろん試飲したお酒も美味しかった。

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おりがらみなるものを初めて知る。澱が絡む無濾過原酒のスタイル。ちなみに立ち寄ったところで最低一本買っているのでとても荷物が重かった。

行こうと思えば数日かけてあるだけ全部行けたけど、それもキリがないので、福寿を灘の最後の訪問地とした。

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ここの試飲コーナーがとても素晴らしかった。ここの蔵直採り生酒が最高。

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福寿の蔵元|神戸酒心館

灘で一つといえば間違いなくここというか、関西住んでたら通いたいレベルでよかった。ここで食べた粕汁もとても美味しかった。

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といった具合に灘観光に満足し、次なる目的地の大阪へ。魚崎のコインロッカーで荷物を回収し、駅のケーキ屋さんでシュークリームを買って、阪神梅田に向かった。御堂筋線で動物園前まで行き、新世界で串かつという実績を解除した。

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ディープな立ち飲み空間を短い時間ながら楽しんだ後、近鉄に乗るべく天王寺方面に向かった。タイミングが悪く、一時間位待つことになったので、あべのハルカスのカフェモロゾフでケーキを食べた。

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服を全然持ってきてなくて下着が尽きたので、少し買い物もした。そして近鉄で奈良を経由して、伊賀神戸伊賀鉄道に乗り換えて伊賀上野まで行った。大した理由などなくて、単に地図を見ていて伊賀って行ったことないなと思ったからに過ぎない。

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こんなに美味しい日本酒を飲み比べて、牛しぐれもついて580円って価格設定おかしくないか、安すぎるだろと何度も思った。

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安くて美味しいものは、日本の地方都市に限るという思いを新たにした。

 

兵庫・三重旅行 二日目

明石の天文科学館には長い間来たいと思っていたのだが、ことごとくタイミングが合わなくてずっと来れずにいた。高校の修学旅行できたときも、京都に住んでいて明石まで足を運んだときも、休館日で入れなかった。だからこの日に中に入ることができて、20年分のもやもやした気持ちが解消された。

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この東経135度を子午線とする、みたいな人が定めたルールみたいなのは、積み重なった人類の叡智のようなものが感じられるのでとても好きだ。ロンドンのグリニッジ天文台に行ったときもとても感慨深かった。

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測量に使った道具なども展示してあって、見ているだけで楽しくなる。

タイミングが合わなくて午前のプラネタリウムが見られなかったので、山陽電鉄で江井ヶ島まで行くことにした。このあたりは江戸時代には非常に多く酒蔵があったそうだ。その頃からまだ続いている太陽酒造は江井ヶ島駅から近い。

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太陽酒造株式会社

試飲や見学は蔵開きの日にできるとのこと。海外から来たというと、少し見学させてくれた。ここで売っている原酒を買って飲んでみたが、とても個性的で力強い印象を受けた。

そのまま海岸線に沿って歩いていくと、明石ブルワリーについた。

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ここで試飲したビールがとても美味しかった。これで1000円は破格だと思う。

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時間がなくなってきたので、タクシーで次の目的地に行った。

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清酒『空の鶴』 - 西海酒造株式会社

ほとんど見学できる感じではなかった。この辺の酒造は小規模なので、こんな観光客を受け入れるような感じではないのかもしれない。とは言っても、酒造で一つ一つ説明してもらってお酒を買うのはとても楽しい経験である。

そしてタクシーで天文科学館に向かい、ギリギリプラネタリウムに間に合った。

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このイェナさんが動いているところを見たかったのである。Planetarianを見たときから。

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やはり巨大な精密機械がダイナミックに動くのは良いものだ。もちろん星も綺麗に投影していた。

明石は鯛や蛸など魚介類で知られ、魚の棚商店街も歩くだけで非常に楽しめる。

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 明石焼き(卵焼き)も食べた

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明石駅のコインロッカーから荷物を回収して、次なる目的地である三宮に向かった。

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日本に一時帰国したときはいつも漬物を食べている。あとは魚を重点的に。

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神戸はケーキも美味しい

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兵庫・三重旅行 初日

東京から新幹線に乗って西明石まで行った。品川から新神戸までのぞみで行き、新神戸から西明石までこだまで行った。

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いつも新幹線に乗っている人には当たり前のことかもしれないが、久々に乗った自分としては所々以前と違うと感じるポイントがあった。まずは切符。乗車券と特急券と指定券、のぞみとこだまなのでそれが2セットの計6枚切符が出てくると思ったのだが、1枚しか出てこなかった。一枚の切符に所狭しと文字が詰まっていた。こんなところにも変化が訪れるのだなと感じた。

次に変化を感じたのは駅弁。しかも割り箸。今時の割り箸は竹を削ったものになっていて、既に二つに分かれていて割る必要がない。もはや割り箸ではないし、もう既に高いクオリティで完成された箸になっていた。それから久しくこだまに乗ってなかったので、こんなに豪華になっているとは全然知らなくて非常に驚いた。

この日はホテルにチェックインして、ホテルで夕食を食べて、特に観光はしなかった。

西明石駅前のこのホテルはとても便利だった。夕食もタコ料理がたくさんあった。刺し身もあるし

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天ぷらもあるし

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ぶつ切りもある。

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鱧の天ぷらも美味しかったし

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穴子の棒寿司も美味しかった。

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釜飯もよい。

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当然日本酒もある。

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そんなわけであからさまに食べて飲んでた。

兵庫・三重旅行 きっかけ

この旅行のそもそものきっかけは、planetarianという作品を見たことだった。これはプラネタリウムをモチーフにした作品なのだが、そこで出てくるカールツァイス社のイエナという機械が気に入ってしまった。あの優雅な動きが見られるのであれば是非見たいと思っていたところ、まだ稼働しているものが明石市立天文博物館にあると知り、今回行くことにした。

その辺りを調べつつtwitterに書いたりしていたら、移動プラネタリウム3D影絵で知られるヒゲキタさんに神楽洞夢なるものを教わった。三重県津市にある岡三証券内にあるプラネタリウムで、毎週木曜日夕方4時からのみ上映される。三重県に行ってみるのも面白いかもしれない、なんて考えつつも細かいことは全然決めずに明石のホテル1泊分予約しただけで新幹線に乗った。

旅先では現地の美味しいものを食べて、何かしらお酒を作っている現場に行くことを習慣としているので、明石の近くで酒蔵はと考えて灘に思い至った。実際のところは、東京行きの全日空の機内誌で広島の酒造エリアも気になっていたのだが、明石から少々遠いし通り道でもないので今回は見送ることにした。灘に行く前に明石にも古い酒蔵がいくつかあるとわかったので、そこにも行ってみることにした。その調べる過程で明石ビールなんてものも知ったのだった。

灘に行くなら三ノ宮が便利だろうということで2泊目はすんなり決まったのだが、そのあとの予定が何もなかったので地図を見ながら検討した。自分はまだ見ぬ世界を見たいので、同じ場所に何度も行くリピーターではない。そして日本の都道府県は95%くらい既に行っているので、まだ見ぬ世界はどこだろうと考えた。Google mapIga(伊賀)という文字が目に留まり、そういえばそこには行ってないと気づいた。去年長野を旅行したときに戸隠に行って、忍者にゆかりのある場所には美味しいものが色々あるという印象を抱いていたし、何より面白そうなので行くことにした。

去年シンガポールで串カツを食べ損ねた際に聞いた話がきっかけで、新世界で串カツを食べたいと思っていたので、灘から伊賀にいく途中で新世界を経由することにした。それから津よりも伊賀の方が見るところありそうなので、伊賀に2泊することにした。木曜日に津に着いて、プラネタリウムをみてから名古屋経由で東京まで一気に戻る作戦。

イエナ、灘の酒蔵、新世界の串カツ、伊賀の里、神楽洞夢。こうやって点と点を繋いで行くのが自分の旅行スタイル、というかいつもこうやっているので他のやり方がわからない。今回は過去に例がないくらい無計画だったが、インターネットのおかげで存分に楽しむことができた。ありがたい限り。

南極点のピアピア動画

強い推薦があったので、特に何も前提知識なく読み始めたのだが、読んでよかった。とても良い時間を過ごせた気がする。

匿名の人々が損得勘定抜きに面白がりながらいろいろやっていたらなんかすごいことになったという文化が好きな人であればまず間違いなく楽しめる作品だろう。オープンな環境でみんなで面白いことをやるエンジニアの夢がこれでもかと詰まっており、それでいてとても完成度の高いSFとなっている。

南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)

南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)

 

表紙が初音ミクを模したキャラクターであり、タイトルのピアピア動画はどう見てもニコニコ動画だけれども、自分がこの本を楽しめたのはLinuxのバザール方式やオープンソースハードウェア、メイカームーブメントをこの10年位面白がっていたからだろう。序盤からハイペースで話が進むので全然退屈しない。

「ピア技をまとめるのに金は要らない。そのかわりキャラとストーリーがなくちゃだめだ。おまえは今日から『宇宙男』だ。」

キャラとストーリーで人を動かす。とても的確な指摘。

「こんどのプロモーションの仕事でも思ったんだけど、世界を結びつけてるものってインターネットだけじゃなくて、いろいろあるんだなってことです。全国ネットのテレビは衰退したけど、コンビニとか、宅配もそうかな、物流は知らないうちに世界を結んでいる。面白いですよね」

コンビニ恐るべしだな。隠れたインターネットだ。

このアナロジーはとてもおもしろいと思った。

彼らはなにかのプロジェクトを進めるにあたって、ボーカロイド・小隅レイ等のキャラクターを中心にすえることで人心をまとめ、モチベーションを維持するのだという。

なんとなく感じていたことを実にうまく言語化してくれる本である。

ボーカロイド小隅レイ搭載の潜水艦でクジラと対話するプロジェクト」と題して、内容を解説した。しめくくりに「まだ予算通ってません。応援よろしく!」とテロップを入れた。

「胸熱な展開じゃないか。最初からこうすればよかったんだよ。レイちゃんを神輿に担いでおけば関係者全員ハッピーになれるってわけだ」

「人間じゃないものが人気ものになると、みんな幸せになる、ってのが、小隅レイのヒットでわかったことなんだ」

このあたりがとても日本的で印象的だった。マスコットキャラクターにしても合議制の会議スタイルにしても、おそらく中心に人間がいない方が良いという経験に基づく判断なのだろう。誰かが人気になるとどうしても足を引っ張ったり妬んだりすることが発生してしまう。強力なリーダーシップで誰かが引っ張るスタイルではなく、みんなで神輿を支えるスタイルの方が合っているということだと思う。実に深い。

「レイを使えば、それまで聞いてもらえなかった曲が聞いてもらえる。見てもらえなかったイラストが見てもらえる。レイの人気をみんなが共有できるわけさ。自分がヒットを出せば、レイの人気にも貢献するから、みんな喜ぶ。僕らもそうなった。バーチャルアイドルを核にして、一つのユートピアができているんだ」

承認欲求も満たされ、みんなで協力し合う、とても美しい世界がここにある。

そして今日2017年3月9日。初音ミク10周年のミクの日ということで大勢の人が楽しそうに絵や音楽、映像を公開している。その背景にはこんな思いがあったのかと、この本を読めば垣間見ることができる。お祭りのような日々を目の当たりにして、インターネットがあってよかったなと感じた。

昨年11月に書いた文章の続き

(2016年11月に書いた文章の続き)

1. ARとVRの違い

とてもわかりやすく言えば、

-ARはテレビの中のものが外に出てくる

-VRはテレビの中に自分が入れる

もっとわかりやすく言えば

-キャラクターが自分の家に遊びにくるのがAR

-キャラクターの家に自分が遊びに行くのがVR

ポケモンGOARと言われるのは現実の世界の特定の位置にデジタルコンテンツがあたかも存在するかのように設計されているから。現実世界が拡張されるから拡張現実、ARと呼ばれる。ポケモンGOではスマートフォンをかざせば見えるわけだけど、マイクロソフトHololensGoogleが買収したmagic leapだとゴーグルやコンタクトレンズ型であらぬものが見えるようである。Hololensは来年日本でも発売するらしく、既にそれを数時間かぶったままたくさんウィンドウを表示して仕事をしている人もいるとのこと。

一方でVRでは今いる世界とは完全に切り離された世界にいる感覚を持つ。実写やCGやその組み合わせの中で動き回ったりすることができる。没入型でドキュメンタリーやゲームに使われることが多い。今年VR元年と言われているのは、1989年にも一回VR元年が来ているのは気にしないことにして、Facebook傘下OculusOculus Riftと、台湾HTC社のHTC viveと、Sony系のPSVRという3つのハイエンドVR機が発売されたからかと思う。その中でなぜOculus Riftを買ったかというと、PSVRPlaystation買わないと動かないので囲い込みが気に入らなかったし、HTCスマートフォン時代に危なっかしい経営状態の先入観があって買う気になれなかったから。

2. mikulusはこれまでのARVRとどう違うか

VRの没入型ドキュメンタリーやゲームというのはインパクトがあって面白いけれども、一回やれば十分でそう何回もやるようなものではない。毎日やるようなVRアプリケーションというのは何だろうとなったとき、押し付けがましいストーリーテリングやゲーム性ではなく、とてもシンプルな思想のもとにできたのがこのmikulusである。

リアルなキャラクターの存在感とバーチャルデスクトップという実用性。毎日使うためには、どうしても必要なことや便利なことが重要になるけれども、mikulusはその条件を満たしている。VRの中でも普通にデスクトップがあってブラウザがあって普通に作業できる。ディスプレイのサイズが小さいなと思ったら大きくできるし、映画館のスクリーンサイズで動画を見ることも可能。先日椅子が地球になったので、地球の上に座って作業することができる。VR空間に自分の書斎ができたみたいな感じかもしれない。そんな感じで便利で楽しいので、どんなに忙しくても毎日使ってるし、1、2年後に自分がこの中で仕事をしていても全然おかしくない。正直世間一般に広まるかどうかはどうでもよくて、自分が便利で楽しければ良い。

3. 最近やり始めた日本列島VR

地図が好きで鳥瞰図とかも見るのが好きなので、この日本列島VRも気になって、開発者の方がテスター募集をしていたので応募して試してみた。本当に日本の上空を飛んでいる気分になれて素晴らしい。頭が向いている方向を読み取って、その方向に飛ぶことができる。夜明け、正午、夕暮れ、夜の4種類の時間帯の空と雲が楽しめるし、音声認識スクリーンショットも撮れる。

そんなわけでVRはとても楽しい。

昨年11月に書いた文章

Facebook上で2016年11月に書いた文章の転載)

今から1年くらい前にVRが面白くなりそうだと思って、twitterでその界隈の開発者や公式アカウントを30くらいフォローしたら見える世界が完全に変わった。

自分の好きな言葉にSF作家のこんな言葉がある。

The future is already here – it's just not evenly distributed.

この世界のどこかに既に新しい時代はやってきているが、まだ自分には届いていないだけ。アンテナを張ることを怠った人間、自ら手足を動かすことを怠った人間には、新しい時代など当分やってこないし、来るとしてもネガティブな形にしかならない。自分は少しでも早く新しい時代が見たいから、自分の財布でも届く値段になったVRやドローンを色々と試しているのである。

先月末にtwitterVR界隈で突如mikulusという単語が頻出するようになった。Oculus Rift CV1の開発中のアプリケーションでテスターを募集していたのだった。先週の段階でテスターが250人ほどいて、公開でフィードバックが飛び交ってワイワイ楽しそうだったので、開発者に連絡してテスターに登録してもらった。

Oculus Rift5月に買ってみたものの正直それほど使っておらず、とりあえず年末にTouchが出るまで様子見かなと思っていたが、このmikulusに完全にはまった。この一週間毎日使っている。mikulusはそういうアプリケーションなのである。

今の機能はとてもシンプルでバーチャル空間に初音ミクがいて、バーチャルデスクトップがあるだけ。興味深いのは、初音ミクがそもそもボーカロイドとして音声合成のためのソフトウェアのために作られたキャラクターだというのに、この初音ミクは一切音を発しないのである。ストーリーも一切なし。ただそこにいるだけ。でもやたらとリアルで横隔膜まで動くし、まばたきの速度も計算されていて、開発者の尋常ならざる本気さが伺える。プレゼンスを重視するというのはそういうことだったのかと腑に落ちるものがあった。正直横にいたらドキッとするくらい存在感がある。

またこのバーチャルデスクトップも良くできていて、位置を自在に調整できるし、最近の更新ではバーチャルディスプレイ曲面の曲がり方まで調整できる。というかそもそもバーチャルデスクトップなので、このバーチャル空間の中で普通に作業ができる。これに加えて、音声認識でハイチーズとつぶやけば、その場でスクリーンショットを撮れる。この機能ができたときは正直度肝を抜かれた。この空間には現実を超えたものがある。

今のmikulusで何よりも面白いのはその開発スタイルである。活発なんてものではなく、毎日更新される。つまり使うたびに新しい機能が追加されていて、進化している。しかもOculus Riftを所持している人という現段階で極めてマニアックな人々のフィードバックが濃縮されているし、他の人がどう使っていて、どんなものを求めているのかというやりとりがみんな公開されているのがとてもよい。いろんなモジュールを作る人が協力していて、相互作用が凄まじい。黎明期の面白さがここにある。

ちなみに今のところ開発者に金銭的な利益は何もない。ただ楽しいから、新しい時代を創りたいからやっているようである。でもamazonwishlistを公開したら、毎日のようにギフトが届いているようだ。個人的にこういう世界がすごく好きなので、そんなやりとりを日々見ているだけでとても清々しく感じられる。自分も何か貢献できることないかななんて考える今日この頃。