東京奇譚集

村上春樹の本は、8割くらい読んでいるんじゃないかと思う。
エッセイで読んだ無理をしないスタイルとかは、
個人的にけっこう影響を受けているような気がする。
先日東京奇譚集が文庫になっていたので、買ってきた。

東京奇譚集 (新潮文庫 む 5-26)
東京奇譚集 (新潮文庫 む 5-26)村上 春樹

おすすめ平均
stars私は春樹が嫌いなのに
stars良いお酒を飲んで酔っ払ったような気分にさせる作品です
stars起きてしまった出来事、去っていく時間
stars本当に意味をもつ三人の女
stars品川猿……

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すごく面白いかっていうと、どうなんだろうと思う。
でも一つ一つ短編を読むうちに、なんとなく不思議な気分になる。

「雨傘とドアとじゃ、かたちも大きさもやくめもずいぶん違うよね」
「違うね、たしかに。でも一目見れば、その場でぱっとわかるはずなんだ。ああ、これが捜していたものだって。たとえそれが雨傘であるにせよ、ドアであるにせよ、ドーナッツであるにせよ」

こういう唐突なものの組み合わせが好き。

いちいち考えるまでもない。それはまさに私が求めていたケースだった。しかし私はスケジュール表をひととおりチェックし、何かを調整するようなふりをした。飛びつくみたいに簡単に引き受けたら、裏があるんじゃないかと勘ぐられてしまう。
「今日は午後まで、うまい具合に時間があいています」と私は言った。そして腕時計に目をやった。11時35分だ。「もしよろしければ、これからお住まいに案内いただけますか?ご主人が最後におられた現場を見ておきたいので」

この辺の表現、雰囲気、ギャップもけっこう好きだな。ちなみにこれはミステリじゃない。
問題を解決するのではなくて、問題が単にそこにあるというのも
悪くないと思う。好みが分かれるところかもしれないけど。