オデュッセイア(下)

いろいろエピソードを詰め込んでいた上巻とは違って、
下巻は、単純明快なストーリー展開だった。

彼に答えて、眼光輝くアテネが言うには、
「あきれた頑固者じゃな。並の男ならば、たとえそれが死すべき宿命を荷う唯の人間で、神ほどの才覚を持たぬ助勢者であっても頼りにしようものを、ましてやわたしは神の身、いかなる危難に際しても、常にそなたを衛ってやっているではないか。この際はっきりそなたに申し聞かせておこう、よしや人間の五十もの部隊がわれら二人を取り巻き、戦いを交えて殺さんと意気込もうとも、そなたは彼らの牛や肥えた羊を奪い去ることができよう。さあ、今は眠るのじゃ。一夜を眠らずに過すのは疲れるばかり。もうすぐにもそなたは危難から這い上がることができるのだから。」
こういって彼の瞼に眠りを注いでやると、世にも麗しい女神は再びオリュンポス指して立ち去った。

イリアスのときは、神対神だったりして、神もそんなに万能じゃなかったけど、
オデュッセイアでは、神対人間なので、神が最強過ぎてかなり一方的。
ここまであからさまにワンサイドだと、それはそれでなんだかなと思ってしまう。

婆やよ、胸の内だけで喜びの声は立ててくれるな。殺された者たちの前で功を誇るのは、許されぬことじゃ。彼らを滅ぼしたのは、神々の定めと彼ら自身の犯した悪事であったのだ。彼らは訪れて来る者を貴賤の別なく、一人だに大切に扱おうとしなかった。されば彼らは己れの無法な振る舞いによって、悲惨な最期を遂げたのだ。

キュクロプスに捨て台詞を吐いていた頃とは大違い。
まあこういう謙虚な振る舞いが、神々の逆鱗に触れないコツかもしれない。

「奴らはすでに近くに来ております。急いで武装を整えましょう。」
こういうと、一同は立ち上がって武具に身を固めたが、オデュッセウスとその部下は合わせて四人、それにドリオスの倅が六人、さらにそれらを混じってラエルテスとドリオスも、白髪の老人ながら今はやむなく戦士となって、武具を身につけた。輝く青銅の武具を身に鎧うや一同は、扉を開いて戸外に出、オデュッセウスが指揮をとった。

なんかよくわからないけど、印象に残った場面。
文章から妙にすがすがしさが感じられた。


というわけで、イリアスオデュッセイアを読み終えた。
イリアスの第一章だけは、読むのがかなりつらかったけど、あとはすらすら読めて楽しめた。
なんかどこかで聞いたことある、と感じられるのが面白かった。影響力がすごいんだろう。
単純すぎるけど、なんかギリシャ、特にエーゲ海に行きたくなってきた。
トロイの遺跡はトルコか。当時の遺跡らしいものはあまりなさそうだけど、
風とか日差しとか景色とか食べ物とか、そういうものを体感したい気がする。