数年前から感じていた特許の軍拡競争的な雰囲気が近頃ヒートアップしていて、現実とは想像以上に激しく変化するものだなあと感じている。もう一年くらい続いて、また急展開があったりするのかなと思ったりしている。軍拡競争で儲かるのは武器商人ばかりでいまいち面白くないので、どーにかしたいというのが自分の課題になりそうだ。そのためにはわかる範囲で流れを感じ取って次を見ることが大切だと思う。
IVのNathan Myhrvoldの見解
IEEEのインタビューで特許の軍拡競争で何が起きるのかと聞かれて、こんなふうに答えている。
You know, I’m not sure that an arms race is a good analogy, but certainly there’s an ongoing, very vigorous competition for who’s going to lead in smartphones, and probably beyond smartphones to all kinds of other digital devices tablets, computers, and so forth.
What Happens in a Patent Arms Race? - IEEE Spectrum
メディアが好んでarms raceという言葉を使い始めたけど、その喩えはどうだろうねと言いたげな感じ。インタビューは全体的にgoogleとappleがこれまで特許をあまり必要としていない分野にいたけれども、訴訟の激しい分野に入り込んだので火に油という状態になっているという流れである。この人がこの先に何を見ているのかは気になるところだ。
RPXのジョン・アムステルの見解
ロイターの記事が面白かった。
焦点:米グーグルのモトローラ買収で「特許バブル」は終えんか | テクノロジーニュース | Reuters
- 「グーグルのモトローラ買収の結果、形勢は一変した。特許の争奪戦は、終わったと言える」と指摘。「グーグルは、必要なものを買収を通じて手にした」
- 「価格は特許の価値そのものを反映したわけではなく、戦略的に決まったものだと考える」と述べ「今後の特許市場で、参考になるようなケースではない」との見方を示した。
- 「企業は常に特許を購入しており、これは今後も続く。しかし戦略的な特許の奪い合いは終わった」
ここまで注目されるのは一時的なことで、これまで通り淡々と続けていくといったところだろうか。IVとRPXがこれからますます重要な存在になっていくことは想像に難くないが、個人的な関心は別のところに移っている。
Ocean Tomoの業務内容
特許のオークションをやってる会社でしょと思っていたが、久々に見ると幅広く手を広げていて驚いた。オークションのために特許のデューディリジェンスをやるところから一歩進めて、Ocean Tomo Indexなんて指数を発表している。ETFまである(http://etfdb.com/etf/OTR/)。特許の市場もある(http://www.ipxi.com/)。シカゴでなにやら動き出しているということはわかる。ここらへんの流れが全然読めないので非常に面白い。
Googleの取り組み
GoogleがFTC(連邦取引委員会)の特許弁護士を雇っていた。
http://latimesblogs.latimes.com/technology/2011/08/google-hires-patent-expert-from-ftc.html
FTCは独占禁止法を扱うところ。特許というのは独占権を扱うものなので、独占禁止法と組み合わせて活用すると非常に強力だ。それからGoogleはUSPTO(米国特許商標庁)ともつながっている。
http://www.google.com/googlebooks/uspto.html
googleのサイトから過去の特許の情報をまとめてダウンロードできる。これは一例に過ぎない気がする。USPTOは予算を削られていて、少ない人数でも効率よく特許の調査をして、ダメな特許出願を拒絶したいと思っている。Googleもダメな特許に基づいて訴訟を起こされると面倒なので、ダメな特許は極力潰して欲しい。USPTOがgoogleの検索ノウハウを活用してまともに特許の審査を始めたらUSの特許のクオリティが向上するわけで、大きな変化が起こりそうな予感。
敵の敵というわけではないが、ソフトウェア特許に反対なEFFもダメな特許を潰したがっていて、こんなことをしている。
https://w2.eff.org/patent/
アメリカの特許は、Bilski事件のCAFC判決の結果として、ビジネスモデル特許、ソフトウェア特許が通りにくくなっている気がする。人間が作ったものeverything under the sunを特許として認めると言っていた時代とはもはや違うのである。