第7回ニコ技深圳観察会(Makeblock)

2年ぶりに訪問したMakeblock。場所は同じだが、ワンフロア増えてた。

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比べてみると、受付のロゴから漢字が消えて英語だけになってる。以前の素朴な感じも好きだったんだけど、ずいぶんと大きくなってしまったなというやや感慨深い気持ちになった。

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部品の種類も大幅に増えていて、とても自由度が上がっている。

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前来たときはこれもなかったなあ。大学の研究室で電子部品を引き出しから出してくるみたいな感じで、こんなふうに引き出しにいろんなものが入っているととても楽しい。

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こういう文化を意識した方向性も以前は見られなかったものなのでとても新鮮だった。

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頑張れば台車にもなる。よく思いつくものだなと思った。特にこのタイヤ。

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これも見たことなかった。以前と比べてとても安定感が増している。

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そして何と言っても目を引いたのはLaser Sword。

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この場で欲しかったけど買えなかったので、家に帰ってからオンラインで注文した。ちなみに2年前はmBotとultimate robot kitを買っているのでそこそこ良いお客さんである。

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 Laser SwordはアドオンパックなのでArduino互換の制御部分はついてなくて、mBot Rangerも一緒に買った。

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 ハードウェアは丁寧な解説があるけど、ソフトウェアはサンプルコードも解説も見当たらないので見よう見まねでやってみた。mBlockというScratchのようなのはとてもシンプルなので単に光らせるだけなら簡単。

こんな雑なのもArduinoに変換してUSBケーブル経由で手軽に書き込める。

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この会社の製品は2年前に買ったときもよくできていたけれども、箱詰めから、部品の精度から、痒いところに手が届くレベルでグレードアップしていて正直驚いた。実際に組み立ててみないとわからないと思うけれども、ネジ穴がピッタリ合うとかモチベーションに密接に関係してくるのでとても大事。無理なく手軽に組み立てられるのでとても素晴らしい。

2年間でこの会社はこんなにすごくなっているのに、自分は大して変わってなくてやばいぞと痛感していて、深圳に刺激を受けてやる気が湧いてくるってのはそういうことなんだと改めて理解した。

第7回ニコ技深圳観察会(Dobot)

別の会社と勘違いしていて、Dobotは家庭内を動き回るスマートホームのハブみたいなロボットを売っている会社かとここに着くまでずっと思っていた。ロボットアームの会社だとは全然知らず、恥ずかしながらその程度の理解でやってきた。

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それがもう既にいくつも製品を出していて、産業用にも全然問題ないクオリティのロボットアームを出している会社と知って驚いた。そして、判で押したように深圳スピードでスケーリングしている。

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ロボットアームって物を掴んで運ぶものだと思っていたけれども、Dobotのロボットアームはヘッドの交換することによって様々な用途に使うことができる。まさか3Dプリントまでできると思わなかった。正確な位置決めが重要なので、よく考えてみればやっていることはほとんど同じだ。

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ハードウェアとしてしっかりできていて、しかも拡張性が高く想像力次第でいろいろなことができてしまう。

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別売りのレールを買ってくれば更に広いエリアを動かすことができる。それからスマートフォンをタップすることができるので、エンドレスな作業もやらせられるようだ。

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そんなDobotは既に様々な会社で利用されている。様々な学校でも利用されているがそのリストの写真は撮り忘れた。

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オフィスはなんかとてもエンジニアの会社という感じがした。

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そんな感じでRobotic arm for everyoneというキャッチコピーでDobot Magicianという家庭用ロボットアームを売り出しているDobotは現在日本でキャンペーン中だ。かなり割引率が高いので、日本で買うならこのルートがおすすめ。

とりあえず実物を見てみたい場合には、今週日曜日に渋谷でやるイベントに行くと良い。まだ4人くらい枠が空いているみたい。

そんな家庭用じゃなくて産業用がほしい人には、Dobot M1がいいかもしれない。

なんかルンバに似て愛着が持てるので、一家に一台あるといいかもしれない。

第7回ニコ技深圳観察会(Tecnostamp)

二日目はTroublemakerが提携している工場に連れて行ってくれるということで、バスに乗ってその工場まで行った。イタリア系の工場で、10年以上深圳で活動しているとのこと。

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一階ではプラスチックの成形をやっていた。金型もたくさん置いてある。

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 上の階に行くと、電子部品の表面実装を済ませた基板も見かけた。この工場ではまだ表面実装をやってなかったけれども、チップマウンタ自体は置いてあって、遅かれ早かれその段階からやるそうである。

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一階の金型で射出成形したプラスチックはこんな感じでカバーになるんだなということがよくわかる。

f:id:pho:20170405101105j:plain ここでは携帯電話の充電器のパッケージもやっていた。

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 これも射出成形

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ケーブルの先端部分をプラスチックで補強している。

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Huawei P10 liteのカバーとケーブルをヨーロッパ向けに準備中。

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内容物を箱の中で固定するプラスチックもここでガシャガシャ作っている。

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 そんな感じで工程を一つ一つ見ることができたので、コアなパーツに外装が加わってパッケージができていく様子がよくわかった。Troublemakerの出張所のようなものもここに入るということで、量産段階の人はより近くで見ることができそう。

見ていて意識したのは、The Hardware Hackerという本に出ていた工場の話。

The Hardware Hacker: Adventures in Making and Breaking Hardware

The Hardware Hacker: Adventures in Making and Breaking Hardware

 

 あのChumbyの量産のためにAndrew Bunnie Huangが深圳の工場を見て回った話である。実際にラインに入ってみるとか、工場の従業員と一緒に昼ごはんを食べるとか、そんな話がたくさん載っているこの本はとても面白いのだが、それと似た世界がここにあるんだなと思いながら見学した。

翌日Ash Cloudという狂気じみた工場に行ったので、正直ここの印象は霞んでしまった。でも複数の工場を見学することによって対比することができたのはありがたい。それからプラスチック射出成形をこれほど近くで見る機会はほとんどなかったので、そんなプロセスを一つ一つみることができてとても楽しめた。

第7回ニコ技深圳観察会(Jenesis)

初日の午後の目的地は郊外にあるJenesisである。

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2年ぶりの訪問である。

今写真を見比べてみると微妙に看板が変わってる。また、中を見学させていただいた。

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ファームウェアアップデートゾーンなるものができていた。急にアップデートする必要ができた際には、ここでまとめてアップデートするとのこと。

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aging roomは前からあったが、以前聞いたときよりも条件が厳しくなっているように感じた。

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あとロボット作っていた。部品点数が多いらしく、これまでやっていたタブレットなどよりも大変そうに見えた。

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説明の内容はいつも同じでとJenesis藤岡さんが謙遜していたが、それがもう全然聞いたことない話がどんどん飛び出して、この人どれだけ修羅場をくぐって、どれだけ引き出し多いんだと圧倒された。役人を相手にした話とか、他の工場が潰れたときのこととか、ここでこの人にしか聞けないような話が相変わらず盛りだくさんである。

とりわけ印象的だったのは、歩留まりの話。サプライヤーから提供されるパーツを組み立てて最終製品にしていくわけだが、つまるところ、サプライヤーから提供されるパーツの品質ですべてが決まってしまうのだとのこと。そのあたりは価格とのトレードオフになるけれども、Foxconnのようなところは、そもそもサプライヤーから提供されるパーツが別物で、圧倒的に高品質で不良製品もほぼ出ないそうだ。サプライヤーにダメ出しをして、時間をかけてでも高品質のパーツを提供させることを徹底する。

JenesisはFoxconnのような規模はないけれども、サプライヤーから提供されるパーツを徹底的にチェックして、できあがったものも全品チェックして出荷しているので、アプローチは異なるけれども高い品質を維持している。深圳のエコシステムを活用して、宮崎のサポートセンターで修理を行い、万全の体制でサポートする会社。そのようなハードウェアの生産に興味がある人は是非コンタクトしてみたらいいと思う。

そんな藤岡さんの本が現在執筆中らしい。他では読めないことがさぞかし書いてありそうなのでとても楽しみだ。

ちなみにJenesisの前にモーター市場に行ったのだが、清明節の祝日らしく巨大な建物まるごと閉まっていた。いずれ行きたい。

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第7回ニコ技深圳観察会(HAX)

自分がHAXのことを初めて知ったのは3年前のこの記事。当時まだHAXではなくHAXLR8Rだったが。

この記事にseeedのことも出ているけれどもそれには気づかなかったらしい。

あとはJoiのブログ記事も読んだ記憶がある。当時Joiを案内したのはあのBunnieか。

Shenzhen trip report - visiting the world's manufacturing ecosystem - Joi Ito's Web

中国・深川訪問記:世界の製造業のエコシステムを訪ねて - Joi Ito's Web - JP

深川(フカガワ)ではなく深圳なんだけどなとは思った。

あと出典は思い出せないのだが、シリコンバレーのVCが見込みある起業家に対して、君たちが中国で起業するならすぐにでも出資しよう、しかし米国で起業するなら出資しない、なんてことを言ったとかこのあたりの時期に見た覚えがある。

そんな文脈でいつも出てきたのはこのHAXという印象を抱いている。本腰をいれて深圳でハードウェアの起業を支援する集団。そういえば第一期生に選ばれたサッソーという日本の会社の人と2年位前にたまたま少し話したような気がする。そんな感じで、断片的な周辺情報はいくつかあったのだが、個人的に謎に包まれていたこの会社を訪問できて話を聞けて非常に楽しかった。

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今回説明してくれたPartnerのBenは、フランス出身で日本語堪能だったりする。

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Troublemakerと違って、Haxは入居者から利用料を取るモデルではなく、世界中から集った応募から見込みがありそうなものを選んで投資する。背後には投資家がいるわけで、当然のことながら大きくスケーリングするものが選ばれやすい。そして、最後はチームを見て判断するとのこと。

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ハードウェアエンジニア、ソフトウェアエンジニア、そしてデザイナーのチームでHAXのアドバイスを受けながら、大化けするものを作る流れとなっている。

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あとはなんとかしてやるから、とにかく細かいことを気にせず開発せよという強いメッセージが伝わってくるフルスタックプログラムである。設備が新しいわけじゃないけど、圧倒的な人のネットワークがHAXの強みだそうだ。

カナダベースのウェアラブルおもちゃを作る会社、Walkies Lab Incの話も聞けてよかった。

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やはり電気街にあるのでパーツ調達のスピードが圧倒的だと感じた。aliexpressなどの通販サービスで注文して2週間から1ヶ月待ってから取り組むのと、wechatで店に連絡して1時間位で届けてもらえるのは全然違う。量産するのであれば郊外の工場の方がいいかもしれないが、プロトタイプ作りをするのに、この電気街をインフラとして使えるのはとても良い。ツアーの後で電気街を見て回ったが、オンラインの注文をさばくべく、次から次へと出荷されている様子が見られて、ここからはじまるんだと感じた。

ちなみにこのツアーの良いところは、見学した会社の話の続きを食事の場で聞けることである。某MRファミコン動画を見せられたBenがちょっと驚いた反応をしていたり、VRにあまり興味なさそうだったり、そんな素の反応が見られて面白かった。

そんなHAXは、日本からのハードウェアスタートアップの応募を絶賛募集中。我こそはという人は、是非応募してみたらいいと思う。

第7回ニコ技深圳観察会(Trouble maker at HQB)

初日朝、华强北のスターバックス前でツアーが始まった。よくわからずについていくと謎の地下駐車場に到着し、そこにオランダ人のHenkがやってきた。

エレベーターで屋上に上がってたどり着いたのはTroubleMakerというコワーキングスペース

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実際のところは、华强北国際創客中心というコワーキングスペースの一部をTroubleMakerという会社がMakerを支援するために借りている。

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遠隔で使っているところもあれば入居しているところもあり、Makerを支援しているところもあったりして、既に一つのコミュニティとしてできあがっている。

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上の三段が協力会社で、残りがインキュベーション施設に入居している企業。影像中国という会社がkickstarter向けのビデオを作る会社かと思ったが、サイトを見てみるとなんか違う雰囲気。

ちょっと検索してみたらこんなのが見つかった。中国語で探せばもっと出てくると思う。この会社はOCTといういわゆるお洒落なエリアにあって、そこで撮影していることが想像に難くない。

Henkによるとこの壁に貼ってあるロゴは頻繁に更新されるものではないから、情報が古いかもしれないとのこと。ざっくりどんな業種の会社がこのコミュニティにあるのか確認するには良いかもしれない。

各部屋には惑星の名前がついていた。金属加工をしてくれる会社。

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知的財産のサービスを行っている会社もあった。北に1キロくらいのところにオフィスがあって、時々そこにきてスタートアップのIPコンサルティングをしているようである。商標が中心で、著作権の登録や実用新案や特許の出願もしているようだ。料金も詳しく書いてある。あと法務関係もやっているらしい。

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华智邦

その他、ここでできたプロダクトの展示も行っていた。

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外に出るとカマドジョー。Align Machine worksで作っているそうだ。

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晴れていれば外でこのカマドジョーを囲んでバーベキューを行い、雨の際にはなかで別のネットワーキングをやるんだそうな。

そんなTroubleMaker。何が他と一番違うかといえば、Henkによるとここには設備と人の両方があるんだとか。最新の設備があるのに人がいなくてメンテされていないとか、人はいるけど使いたい設備がないとか、そんなコワーキングスペースを多く見てきた彼は、最新の設備とそれをメンテナンスしたり、困ったことがあれば様々な分野で相談できる人を用意し、コミュニティとしてうまく機能する場所を作ろうとしている。

月々1200元(約2万円)で自分の机が持てる。月々2400元(約4万円)でCNCや3Dプリンターオシロスコープなどすべての機材にフルアクセスできる。日本人はビジネスでも2週間までならビザ無しで中国に行けるので、华强北のコミュニティにアクセスしたい人は行ってみるといいだろう。見学ツアーへの申込みもサイト上で受け付けている。

ハードウェアで本腰入れて何かをしようと思ったら、現時点で動いているここは選択肢の一つに入れて良いだろうなと感じた。とにかくカジュアルでとても雰囲気が良い場所である。翌日提携工場にも行ったがそれはまた別のお話。

第7回ニコ技深圳観察会に参加してきた(概要)

シンガポール在住の高須さんとtwitter上のGOROmanさんには、このところ多大なる影響を受けてきた。高須さんに会わなければ成都に行ってないし、シンガポールメイカーフェアにも出展していない。GOROmanさんのtweetを見ていなければRicho Theta S360度動画に興味を持っておらず、VRにも関心を持たなかったと思う。そんな2人があの深圳に行くと知り、これはどう考えても面白いので参加するしかないなと思い、一週間休んで航空券を取った。2年ぶりの深圳である。

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前回はMaker Faire Shenzhenの後の1日だけだったが、今回はみっちり3日間のバスツアー。30名近い参加者とともにAccerelator, スタートアップ、工場などを回った。これについてはあとで一つ一つ丁寧に書く予定。とにかくずっと楽しかったし、ずっと何かしら高揚した気持ちだった。誰もが何かしら思うところがあって自発的に参加しており、食事の際の話もとても面白かった。

今回で7回目となるこのツアーから派生してできた本「メイカーズのエコシステム」について、高須さんはよく、みんなで書いた本なのに自分の名前で出てしまって申し訳ないみたいなことを言う。きっとこのツアーについても、誰よりも時間を書けて自らあらゆる手配をして声がかれるほど頑張っていたのに、みんなでつくりあげたツアーというのだろう。それが高須さんの所属するチームラボのカルチャーなのかもしれないが、高須さんはそんな人だと理解している。

深圳という土地と高須さんのいつも何かを期待させる力に引き寄せられた30名近い今回のチームはなかなか濃く、一癖ある人々が集まり、新しいもの・見慣れぬものに興奮し、子供のようにはしゃぎまわっていた。他の人が何を面白がるのかというのはとても興味深く、それによって深圳の様々な面を見ることができる。wechat paymentの活用例やVRの現状、小米之家など、参加者の関心によって視野を広げることができる。想像していなかった視点に気付かされることも多い。

自分について言えば、2年前に初中国で深圳に来たとき、中国自体に対して多かれ少なかれあった偏見は消滅した。そして電気街の圧倒的なスケールと人々の勢いを目の当たりにして、製造業の都としての深圳の認識を新たにした。昨年2度目の中国で四川省成都に来たとき、街中にあふれるAlipayWechat paymentQRコードを目の当たりにして、個人決済最先端の中国を実感した。そして、今回3度目の中国、2度目の深圳を訪れ、ここがライフスタイルや価値観を大きく変える場所であると強く感じた。技術の力で社会の問題を解決し、技術の力で倫理の問題をも解決する事例がここでたくさん見られるようになる気がした。

技術の力で倫理の問題を解決する具体例を挙げると、Amazon Goみたいなものと考えるとわかりやすいかもしれない。万引きという概念をなくして、レジなんてものはなくてよかったんだと既存の概念を気持ちよく壊してくれる。セキュリティの隙間を突いて何かしら悪いことはできるかもしれないけれども、基本的に万引犯罪という社会の問題が技術的に解決されることになる。深圳からはそんなAmazon Goのような倫理の問題を解決するサービスが、勢いある人々と最先端の個人決済手段によって次から次へと出てくるような気がした。

深圳で見たofoというどこにでも停められるレンタサイクルサービスは、安価な自転車の盗難を消滅させるかもしれない。転売目的の高価な自転車の盗難と違って、安価な自転車の盗難は倫理観のない人間による一時的な移動手段の確保に過ぎないように思う。逆に言えば、一時的な移動手段の確保が手間なく安価で手に入るのであれば、犯罪に手を染める必要は全然ない。身の回りの至る所に少額で利用可能な自転車があって、どこで借りてもどこで返しても良いのであれば、自転車の盗難という概念がなくなる。

また、どこにでも返却できるモバイルバッテリサービスをみて、盗電だのマナー違反だの言うくだらない話が消滅する気がした。電源が足りなくなったので出先で充電したいという欲求を満たすサービスにより誰もがハッピーになれる。インフラとしてのwechat paymentという個人決済手段と十分な数のバッテリを市場に投入できるほどハードウェアが安価になったこと、そして熱心に働きビジネスチャンスを伺う人々により完成されたシステムなんだと思う。とにかくなんでも早く進むこの地では試行錯誤の回数も圧倒的に多く、そこでうまくいったものが生き残っているのだろうなと感じた。

街中で新しいサービス、新しいものを見るだけでなく、急成長するスタートアップやそれを支援する人々、慢心しない貪欲な大企業、貪欲に新しい試みを続ける工場などを見学することにより、目先の新しさではなく本質的なこの地の強さを日々実感した。急激な変化を続けるので、最低でも年に一回は来ないといけない場所だと思った。そして、日頃から深圳スピードまで自分を加速させて決断・行動しないとどんどん差をつけられると痛感した。自分にとって深圳とは、そんなとにかくやる気が溢れてくる場所なのである。

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