イベントログの是非(NO blog zone)

このブログには、ちょくちょく大雑把なイベントログを書いている。
他人に見せるというよりも、自分が見て内容が思い出せるように
キーワードの走り書きという体裁だが、個人的に役に立っている。
しかし、そういうログの公開を禁止するイベントがあるらしい。
Greg Verdino's Marketing Blog: Nielsen BuzzMetrics CGM Summit is a no blog zone
http://gregverdino.typepad.com/greg_verdinos_blog/2006/10/social_media_fi.html 

"Off The Record: the CGM Summit is off the record, so please no blogging, reporting, recording or broadcasting."
Hmmm... So how can you host an event about consumer generated media and not let your consumers, um, generate media?

CGM(消費者が発生させるメディア)のイベントを主催しながら、消費者にメディアの発信を禁止するのか。
全くその通り。そこを否定して何がCGMだよな。
これに対して、イベントにブロガーを呼んだときのことを書いている人がいた。
Logic+Emotion: No Blog Zone?
http://darmano.typepad.com/logic_emotion/2006/10/no_blog_zone.html 

And not everyone is going to say wonderful things about you. Noah Brier was one of the bloggers in attendance and respectfully challenged my vision of "Influence Ripples". He brings some good food for thought to the table and I personally see value in this.

誰もが自分にとって素晴らしいことを書いてくれるわけじゃないけど、それでも個人的に価値はあったとのこと。
この2つの記事を受けて、こういう記事があった。
Micro Persuasion: Should Conferences Ban Blogging?
http://www.micropersuasion.com/2006/10/should_conferen.html 

"I see both sides of this issue, but I agree wholeheartedly with Greg. On the one hand if you let bloggers write about a customer conference in detail, there's little need for anyone to pay to attend. However, on the flip side, if you allowing blogging and people take you up on the offer, it's highly likely that you will generate excitement that boosts customer attendance next year. This is especially true if the conference, um, is in part about blogging."

CGMのイベントにブログを禁止してどうするんだというGregの意見に賛成だけど、カンファレンスの
詳細についてブロガーに書かせたらお金を払って参加する必要がほとんどなくなってしまう。
でもブログを許可したら、きっと来年の参加者を大幅に増やすようなことを書いてくれるだろうし
そのカンファレンスがブログに関するものならなおさらだ、とのこと。
イベントが小さかったら、もっと認知されるためにどんどん公開したらいいけど、
イベントが大きくなったら、囲い込んでがっちりカネをとりたいと思うのかもしれない。


そういえば以前梅田さんが、ブログに講演内容を公開することについて書いていた気がする。
My Life Between Silicon Valley and Japan - 情報の伝播の新しさと、それを苦々しく思う人たちの存在
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20050919/p1

それでびっくりしたのは、ふらふらになってホテルに帰ってみたら、つまり講演終了から3時間後くらいですね、もう講演ログがネット上にアップされていたことです。
http://d.hatena.ne.jp/pekeq/20050916/p1
「会場にノートPCを持ち込んでメモを取っている人たちが何人もいましたねぇ、こんなことは今までの講演会ではなかったですよ」が、終了直後の主催者側の感想だったわけですが、その中の一人が、こんなに精緻なメモをほぼリアルタイムで取って(帰りの電車の中で推敲し)、すぐにネット上で公開されるとは、間違いなく「想定の範囲」外だったでしょう。しかも三連休中に「はてなブックマーク」の人気エントリーのトップに上昇して、
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/pekeq/20050916/p1
講演内容についてのかなり正確で精緻な情報が、連休が明けるまでに、かなり広く伝播しつつあるわけです。

もちろん講演者が僕であるから、「こうしたことが行われるのを絶対に許容するだろう」という「読み」があっての公開だろうし、実際にその「読み」は正しいわけですが、閉ざされたエスタブリッシュメント世界の住人たちにとっては、きっと大きなサプライズに違いない。いろいろなところで全く同じ講演をして稼いでいる人とか、たくさんいるからねぇ。

こんなことやられたら困ると、主催者側に文句を言うだろう講演者も間違いなくいるだろうし、ひょっとすると次のセミナーからは、主催者側が、講演開始前の注意として「携帯の電源をお切りください」だけでなく「この講演内容をBlogで公開するのはご遠慮ください」なんて話になってしまう可能性はあります。

去年梅田さんが書いてたことが、本当になってしまったんだな。


これまでに数回参加している百式のイベントについては、こういう記事があった。
百式・田口氏が仕掛ける“アカデメディア”――速攻で“満員御礼”になる異業種交流会の秘密
http://ascii24.com/news/i/keyp/article/2005/03/22/654942-000.html 

"[編集部] スポンサー企業にお願いをしている条件はありますか?
[田口氏] “秘密主義はゼロで”ということです。イベントであったことは参加者にブログで書いてもらうのが前提なので、売り込みではなく、正直に悩みをいってもらうということですね。
[編集部] どうして秘密主義はダメなのでしょう?
[田口氏] イベントとして、そのほうが盛り上がると思います。心理学的なものでしょうが、「すごいぜ」というだけの話だけだと、聴いている方は何もしたくないじゃないですか? 「苦労しています」という話のほうが、共感が得られます。
イベントとして盛り上がるのは、何らかの“悩み解決”がいいので、泥臭いくらいの、1つの製品に固執するテーマのほうが、理解されやすいですね。

このイベントの特徴としては、全員参加の企画立案会議が挙げられる。
イベントログで内容がわかっても会議には参加できないから、人気のイベントになるんだろう。
参加型かどうかは別として、イベントの雰囲気というのは参加しないとわからないから
ログを読むのと参加することは全く別のことだと思う。どちらがいいとははっきり言えないけど。


全部公開なら非常に話はわかりやすいけど、制限し始めるとどこまでがOKでどこからがNGなのかわからない。
BLOGがダメならmixi日記はOKか?掲示板、メーリングリスト(あんまり使わないけど)に投稿はOKか?
友だちに話したらダメ?講演はきっと著作物だけど、私的利用の範囲というのがどこまでかよくわからない。
不特定多数になれば権利侵害になるかもしれないけど、出所を明示しているし、営利目的じゃないし、
別に録音とか録画とかして公開してるわけじゃなくて、自分というフィルタを通して書いてるだけだからどうだろう。
イベントログをとる個人的な理由としては

  • 手書きよりもキーボードの方がはやい
  • キーワードで検索できる
  • 公開すればシェアできるし、バックアップになる

まあこの辺りが理由。他の人も公開してくれたらそれが読めるんで
自分が参加していないイベントについても効率よく知ることができる。
takeだけなら気持ち悪いんで、ちょっとはgiveしようかという感覚。


ログをとる理由は、そのまま流れてしまうのがなんとなくもったいないから。
「キーボードは手の一部です」と言っている人がいたけど、自分の場合は
「ブログとブックマークは脳の一部です」となるのかもしれない。
自分の脳の記憶能力なんて全然信用できないから、頭は、できる限りからっぽにして
情報を外部の信用できるとこに預けておいて、何かを考えるために使う。まさにGTD
脳の一部を公開しておけば、相互作用を起こして何か面白いことになるかもしれない。
情報を抱え込んでおいても何も起きずに古くなるだけだからつまらない、と思う。


でもまあこういうことは、今自分が何も持っていないから言えるのかもしれない。
講演することが生活の糧となっている人なら、なんとしても守りたいと思うだろう。
チープ革命の波がここまで押し寄せたと思って諦めて欲しいけど、そう簡単にはいかないか。
講演に限らず、youtubeで公開される著作物全般に言えるのかもしれない。