AmazonのCTOであるWerner Vogels氏がやってくるという情報を入手したので行ってきた。ちなみにAmazonがシンガポールでやっているのはAmazon Web Service(AWS)のみで、本の販売は行っていない。話の内容は主にクラウドコンピューティングだった。
現在AmazonはConsumer Business、Seller Business、Web servicesの3つを行っている。Consumer Businessは本などをAmazon自らが販売してるもの。現在7カ国で展開中。Seller Businessは、Amazonが他の店にオンライン店舗のプラットフォームを提供しているビジネス。そして、Web Servicesは、Developers, IT professionals向けのクラウドコンピューティングサービス。AmazonがAWSを始めたときは唐突に感じたが、こうして3つ並べてみると流れが見えてくる。
従来は企業が、時間やコストの70%を差別化できないことに費やして、残りの30%で差別化を図るValue Creationをしていたが、そこを逆転させようというのがAmazonの狙い。The 70/30 Swichと呼んでいる。差別化にならないけど手間がかかるところはAmazonが代行するので、他社と差別化できるValue Creationに全力を注いでくださいなという話。Amazon S3はQ1 2010において、ピークリクエストが150,000/secに達するほど客が増えているそうだ。そして事例紹介
Intuit (http://www.intuit.com/)
スモールビジネスの給与計算、税金計算などをするサイト。このサイトは4月15日の深夜になる5分前に急激にアクセスが増えるそうだ。米国の確定申告期限だから。ぎりぎりまでやらないでおくのは人の常。そういう一時的なアクセスに対処するため、AWSが役立ってますよとのこと。
Nasdaq (http://www.nasdaq.com/)
2年前のデータにすぐアクセスできないといけないとかなかなか厳しいが、AWSを使うことによって費用を格段に減らすことができたそうだ。
詳しくはケーススタディを参照されたい。
http://www.infoq.com/articles/nasdaq-case-study-air-and-s3?
Razorfish (http://www.razorfish.com/)
ストレージの会社。スケーラビリティが大幅に改善とのこと。
Bild.de (http://www.bild.de/)
ドイツ語のサンスポみたいなサイト。これまでならでかくて高いハードウェアを買わないといけなかったのが、AWSを使えば簡単に実験できるとのこと。
Lawson (http://www.lawson.com/)
lawsonというERPの会社があるらしい。ビジネスにとってクリティカルなサービスをしてるけど、AWSの信頼性は問題なし、とのこと。
Netflix (http://www.netflix.com/)
DVDを郵送してレンタルする会社だったネットフリックスは、2年前に方針転換をして現在動画を配信しているらしい。Amazonも動画配信をしており、2社が同じプラットフォーム上で動作しているのは興味深いとのこと。シンプルで、ビジネス全体を再発明して、21世紀的な思考をする素晴らしい顧客だとのこと。
social gameいろいろ(zyngaとか)
何よりも興味深いのは、2年前にこの分野が存在すらしなかったこと。まったく新しいビジネスであろうとのこと。
米国政府(NASA、National Archiveなどなど)
お得意様の一つ。セキュリティ重視なとこにも支持されてるとのこと。
そもそもCloud Computingとは
Gartnerが2008年にした定義がお気に入り。
Gartner defines cloud computing as a style of computing where massively scalable IT-related capabilities are provided “as a service” using Internet technologies to multiple external customers.
Gartner Says Cloud Computing Will Be As Influential As E-business
オンデマンドで使えて、使っただけ支払える、それがクラウド。ちなみにAWSクラウドの特徴は
- lowest cost(コストが安い)
- Eliminate Capital Investment(大金を投資しなくてよい)
- Reduce Operational Costs(運用コストも下がる)
- Increases Agility(アジャイルアジャイル)
- Reduce time to Market(素早く市場に投入)
- Remove constraints(制約なんてない)
- 21世紀型(意味不明)
かつて企業は自社で発電しなければならなかった(今もしてるとこあるけど)。小さいところが自分で発電設備なんて備えるのは大変だ。IT componentもまた然り。そろそろ似非クラウド(False Cloud)、プライベートクラウド(笑)についてちょっと言っておこうというのが面白かった。
- 完全に間違ってる
- 定義と違う
- コスト削減にならない
- 恩恵もない
- 大きなペテンだ
最後に11のAmazon Principleの紹介。
1. design for flexibility
- フレームワークじゃなくてツールを作るのだ。顧客をロックインする必要なんてない。シンプルなツールだ。
2. design for on demand
3. design for automation
4. decompose into the simplest form
5. Break Transparency
- インフラにとって透明性は重要。パフォーマンスとか、セキュリティとか、コスト効率とか、
- レイテンシがコストよりも重要なケースがある。あなたのビジネスをどこでやってるかによって影響が出てくる。Amazonはインドでも低レイテンシ。
6. design with security in mind
Amazon Virtual Private Cloud (VPC)があるよとのこと。
7. (聞き逃した。オラクルもSAPもデロイトトーマツもAWSを使ってるって話)
8. continuance
9. utility pricing
10. Focus on what doesn't change
11. Let your customer benefit
- 一般的に変わらないと見られているものに注力してみよう。そうすれば何か新しい展開が見えてくるかもしれない。そして顧客を幸せにしよう。そのためにAmazonはセキュリティに最も重点を置いている。顧客が毎日使うものだから。
感想
朝からステーキ食べてそうなごついおっちゃんだなーと思ったら講演者だった。アムステルダムの大学でPh.Dをとっているのでオランダ人か。それなら納得。一貫してシンプルな主張だったのでわかりやすく説得力があった。大切なのは差別化をいかにサポートするか。コモディティをいかに効率よくセキュアに提供するか.これだけの規模があるからできるんだな。最も興味深いと思ったのは、変わらないことにフォーカスするところ。他の人が思考停止している部分、当たり前だと思って流している部分、そこにとことんフォーカスすることで次の道が見えてくるんだろう。とりあえず、今回話を聞いて、通販とクラウドというふうに別々じゃなくて、ビジネスの流れとしてつながっていることが理解できてよかった。
Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)
http://aws.amazon.com/jp/ec2/
Amazon Simple Storage Service (Amazon S3)
http://aws.amazon.com/jp/s3/
Amazon Relational Database Service (Amazon RDS)
http://aws.amazon.com/jp/rds/
Amazon CloudFront
http://aws.amazon.com/jp/cloudfront/
製品
http://aws.amazon.com/jp/products/
AWSと自前で持ったときの比較
http://aws.amazon.com/jp/economics/
導入事例
http://aws.amazon.com/jp/solutions/case-studies/
AWS Start-Up Challenge 2010
http://aws.amazon.com/jp/startupchallenge/