intellectual ventures(IV)関連で興味深い記事があったのでちょっと感想を書いておく。ついでにこの1年で気になった記事もまとめておこう。
IVがサムスン、HTC、SAPと立て続けにライセンス契約を結んだことは非常に興味深いと思った。
HTC : http://moconews.net/article/419-htc-shores-up-in-legal-fights-with-30k-patent-deal/
Samsung : http://www.techflash.com/seattle/2010/11/samsung-in-patent-deal-with-myhrvolds.html
SAP : http://www.infoworld.com/d/applications/sap-patent-firm-intellectual-ventures-reach-license-pact-827
Android周りで訴訟が頻発するというのも大いに関係がありそうだ。訴訟対策として巨大なpatent portfolioを持つところと提携するのは、パテントトロールに対抗して特許を買い集めるRPXによく似ている。これを見て今何となく思ったのは特許のクラウド化(クラウドと言ってみたかっただけです、ごめんなさい)。特許というのは毎年各国に維持費を払うし、無効にされそうになったら反論しないといけないし、非常に管理が面倒。言語も法律も違う(しかも法律はころころ変わる)のに、日付をきちんと管理してきちんと対応するとか想像しただけでも大変。そういう管理をアウトソースして、訴訟のときに活用するというのはそれほど悪くないやり方だと思った。あとIVは昨年訴訟に踏み切った。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703493504576007444122372926.html?mod=googlenews_wsj
- セキュリティソフトウェアの会社(Symantec、McAfee、Trend Micro、Check Point Software Technologies)
- メモリーチップの会社(Elpida Memory、Hynix Semiconductor)
- プログラマブル半導体の会社(Altera、Lattice Semiconductor、Microsemi)
ライセンス交渉が難航してやむを得ずそういう手段をとった旨がプレスリリースに出ていたと思う。訴訟をするなら我々の特許はやらんと言っていた日本の大学の人はどうするんだろう。
ここだけ切り出して書くとお金を払うか訴訟かの2択を迫る脅迫っぽく見えるけど、特許権という国が認めた権利を真っ当なやり方で使っているだけである。文句があるならロビー活動をして国に法改正を迫ればいいとも言える(ディズニーが著作権法に対してやっているように)。そもそも訴訟って弁護士ばかりが儲かって両陣営にあまりうまみがないので、訴訟なしでなんとかできるのが望ましいと個人的には思う。
I had a lot of experience going into Intellectual Ventures—more experience in monetizing patents without litigation. I had a good understanding of the value of patents and how to explain them, and an understanding of the intersection of finance and patents.
The Future of Patent Wars: More of the Same, but Less Litigation, Says John Amster of RPX | Xconomy
What [Intellectual Ventures] proved was there is a market for buying patents. And most people who own patents view them as inventions and property that they’re entitled to monetize, and willing to monetize without litigating. It was an interesting arbitrage opportunity. The market accelerated a lot because of what IV did. It’s not about punishing anybody, it’s about getting them paid.
これはIVから独立してRPXを立ち上げたJohn Amsterの言葉。訴訟を起こさずにいかに特許をマネタイズするか。特許の価値を理解し、それを説明し、特許とファイナンスが交錯する点を理解する。IVにより特許の市場が存在すると示されたので、訴訟をせずにマネタイズしようよという話。金持ちけんかせずって言うもんなあと思った。
IVの人事の話で気になったのは、Assistant Attorney GeneralのDavid Kris氏を引き込んだこと。
http://www.mainjustice.com/2011/01/13/kris-to-join-seattle-based-patent-company/
国の要職にある人も引き込んだのかと思うと、次なる一手が楽しみだ。
こんなことを書くと、金に物を言わせて研究もせずに特許で好き放題やってて、なんてひどい奴らだとか勘違いするひとがいそうだが、この会社の研究・開発の規模はすごい。しかも着実に拡大している。先日のThe Economistの記事は既に知っている情報ばかりでこれと言って目新しいものがなかったが、
Its boffins in Bangalore are working on projects ranging from a red laser to preserve food to a DNA nano-machine to deliver drugs to precisely the right spot in a patient's body.
Crazy-talking boffins | The Economist
この1文が興味深かった。いつのまにやらバンガロールで研究してて、赤色レーザーで食料保存したり、drug deliveryに手を出したりしていたとは。
http://medgadget.com/archives/2010/10/tedmed_2010_day_1_shaf_keshavjee_nathan_myhrvoid_nathan_wolfe_and_more.html
病院の壁一面に紫外線を閉じ込めた膜を張って殺菌したり、バクテリアを殺すことで圧迫潰瘍を防いだり、後方散乱X線を使って線量を低下させるなんてこともしてるそうだ。
IVとは直接関係ないが、個人的に気になるのはパテントフリーゾーン。
http://jp.techcrunch.com/archives/20100801opportunities-in-the-patent-free-zone/
要するに市場としてあまり魅力のない地域は特許も取られてないから侵害にならないという話。
http://www.patentfreezone.com/
アフリカの多くの国がこんな状況らしい。monopolyとfreeの間は今後も重要なイシューなのだろうと思う。一番取り上げたかった記事までいかなかったがけっこうな分量になってしまったので一旦ここで切り上げよう。
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