ニコ技グルガオン観察会を終えて

2015年のMaker Faire深圳後の深圳ツアーに参加して以来、そこそこ参加しているニコ技深圳コミュニティ。スピンアウト企画として昨年はアディスアベバ観察会が行われ、そして今回は私の住むインドでグルガオン観察会が行われた。

10人くらいのグループを連れて案内をするのは3回目である。1回目は360度カメラのスペシャリストやシンガポール在住のマーケティング分野の人たちを集めた深圳360カメラメーカー訪問。2回目は玩具づくりをしている人たちを連れていった汕頭玩具工場訪問。中国でちょっと大きいバスを自力でチャーターするのはそこそこ面倒だが、慣れれば大したことはない。そしてこの3回目は、様々な国のMaker Faireでよく会っている人たちを案内するグルガオン見学である。実際はグルガオンよりもデリーばかり訪問する結果となった。

全部アレンジしておもてなしみたいなことをやるスタイルももちろんあるんだろうけど、訪問先のアポは来る方々や別の方々におまかせして、自分は現地の移動手段なり、現地の周辺情報などに注力するスタイルの方がいいんじゃないかと感じている。全体として満足度を最大限に上げるにはどうしたらいいかと考えたとき、餅は餅屋だろうという結論に至った。自分がずっとでしゃばっていても疲れるし、いろんな分野で自分よりうまくできる人はいくらでもいるので、お客さんをゼロにして全員参加型でいいんじゃないの、ということである。

そして今回、ニコ技グルガオン観察会はいろんなものがすごくうまく機能していて実に充実した内容になり、とても楽しかった。インドが英語の通じて国際ローミングもありUberも使えるぬるすぎる国なのか、参加者全員が旅慣れすぎていてアクシデントに対するリカバリ能力が高すぎるのか、そのへんはよくわからないがとてもスムーズだった。参加者全員が一般的な基準から考えると趣味に対してストイックで突き抜けており、いろんな訪問先で各分野のスペシャリストの解説を聞きながら見学できるというとても贅沢な観察会となった。

東京のインドカレーを食べ尽くした一瀬さんについていけば様々な州庁舎の美味しいカレーを解説付きで食べられるし、ロボコン経験者の鈴木さんに解説してもらいながらインドのロボコンを見学すると他国と比較しながらインドのSTEM教育の一端を垣間見ることができる。伊藤さんについていけば電子情報技術省(MeitY)でDigital Indiaの話が聞けるし、駐車場の管理端末を見て「チャイナのニオイがする」という名言を聞くこともできる。美谷さんについていけば起業家の視点からインドのスタートアップの特徴を非常に説得力ある形で聞くことができる。加藤さんからはムンバイのメイカーイベントに実際に出展した経験に基づく話が聞ける。井内さんと樺沢さんとについていけば航空機やバスに関するマニアックな話がこれでもかと聞けるだろう。高須さんと湯村さんといくインドサイエンスセンターツアーに参加したかったが、自分としてはグルガオン意識高い写真スポットツアーを主催する使命感が出てしまったので断念した。そんな感じでみんなが一次情報を持っていて、コンテンツに溢れていて全然退屈しなかったし、全然時間が足りなかった。

自分としては、この5ヶ月に見た話、聞いた話、考えたことなどなどを総動員しながら話して、少しでもこのインド滞在を楽しんでいってくれたら良いなと思った。情報を一つ提供すれば全員が一つずつ提供してくれて10倍になって返ってくるみたいな体験をしてしまうと、オープンなコミュニティで知見をスピーディーに交換しながら次なるステップに進んでいくのが楽しくて仕方がないし、情報を抱え込んでカビの生えた情報しか持ってない人を残念な人だなと感じてしまう。

インドに来てこの5ヶ月で何か物足りないと感じていたのはこの感覚だったのかと今回のグルガオン観察会を通じて気付かされた。やはり一次情報に触れずに又聞きの情報だけで話す人の言葉は軽い。メイカーと旅人は一次情報の宝庫だし、日々様々な情報に触れていて自分にはない視点を持っているので、同じものを見た後に食事しながら感想をざっくばらんに言い合えるのはとても楽しい。そんなとても密度の高い体験ができてよかった。